正直、ここまで盛り上げるとは思わなかったなぁ新型ウィルス・・・。でも、1月の時点で一部の中国系メディアでは「これやばいんじゃないの?」という情報はちらほら出ていました。そんな中、僕の対応は割と早い方で、1月中旬の時点で必要な量のマスク・トイレットペーパー・アルコール等はきちんと備蓄できていました。2月に入り、滞在中のシンガポールで小規模な買い占め騒動も起き、「日本もそのうちこうなるかもな・・・」と思っていた矢先の、3月のこの騒動。この未曾有の感染症流行に、僕(ら)がどのようにして立ち向かっているのか。大袈裟だけど、そんな現在進行形の日々をちょっとまとめてみたいと思います。
1月頭、悪い噂がちらほらと聞こえてきた。
「中国中部の武漢にて謎の肺炎発生」の一報
僕がかつて福島県庁にいた頃、CIR(国際交流員)として武漢市の公務員の方が県庁国際課に派遣されていて、僕はその人から中国語を習っていました。ロ先生という方で、授業の合間に武漢の話を色々教えてもらったのを印象的に覚えています。歴史ある大都市(三国志の時代には確か襄陽だったはず)で1000万人以上の人口があるとのことでした。
その武漢で謎の肺炎が流行っているという情報がネットに出てきたのが、確か年明けすぐのことだったと思います。僕は中国語系メディアも Facebookを通じて色々フォローしているので、その中で「原因不明だが謎の肺炎で亡くなる人が続出している」とか、そんな感じでの報道がちらほら出始めました。
しかし正直なところ、SARSとかMERSとか、古くは新型インフルエンザとか様々な感染症がこの10何年間ひっきりなしに現れては消えを繰り返していたので、「ああまた何か変な病気が中国から出たか」くらいの感じで、あまりリアルな実感を伴わないというのが正直なところだったと思います。
1月22日、武漢閉鎖の噂現る
僕が「これはヤバいかも?」と思い始めたのは、武漢が完全ロックアウトされることになった1/24前後です。テレビで見た人通りの一切ない街の風景は、まるでハリウッド映画のような非現実感を僕に感じさせました。その少し前にジャニーズのSixTonesとSnow Manがデビューしたので我が家は少しだけ騒ぎになっていたのですが、その中で冷や水を浴びせかけるような、隣国での大規模感染症発生のニュースではありました。

人生初購入のジャニCD
「んー、これはもしかすると日本にも来るかもな。てか来てるかすでに。」
実はその少し前から「万一地震とか来たら困るから、やっぱり備蓄を増やしておこう」と思い、携帯コンロ用のガスボンベやペットボトル水、それにトイレットペーパーとティッシュペーパーの備蓄を進めていましたが、この日はより感染症に的を絞った対策として、マスク2箱100枚と除菌用アルコール、そして使い捨てのゴム手袋200枚をいつもお世話になっている某ア○クルに注文しました。実はこの1/24前後であれば、結構使い捨てマスクもネットで売られていて、大量に買う気になれば買うことも出来ました。しかし、そういう弱みにつけ込んで後から高値で転売するような商人には絶対になるまいという、謎の思いこみがあったために、結局家族二人で3ヶ月分程度と思われる100枚でやめといたのでした。今となってはそれが良かったのかどうかわかりません。というのも現在3月6日現在でマスクは未だ品切れで新たに入手する目処がなかなか立たないからです。
そしてシンガポールへ
とにかく、最低限の備蓄品は揃ったので嫁さんと二人でシンガポールに向かいました。今回のミッションは基本的に彼女の仕事に関わるミーティング出席がメインですが、僕ら二人で株式会社をシンガポールに作るという裏ミッションもあったのでした。作業は滞りなくすみ、エージェントで会社登録の代行を済ませ、当地の銀行で無事会社口座を開設するところまで行って今回はミッションコンプリートです。
そんな中、シンガポールでは感染症対策の警戒レベルがオレンジに引き上げられたことに伴い、一部のスーパー等に置いて食材(米等)の買い占め騒ぎが起きました。1月から2月に移行するに従い、様々な地域で感染者が確認されるようになり、シンガポールもその例外ではありませんでした。人々の不安が増幅する中で起きた今回の買い占めですが、しかしテレビ等を通じてリー首相がキッパリと買い占めが不要である旨を国民に向けてアピール/スピーチしたことにより、今回の買い占めは鎮静化しました。

スーパーには普段あり得ないほどの長い列が
この頃、日本における感染者数はとても低いもので、確か1桁を超えることはなかったように思います。未だに屋形船がどうだクルーズ船がどうだとのんびりした報道がなされていて、3月明けから今に至るような切迫感はあまり感じられなかったように思います。むしろ、中国との関係が深いシンガポールの方がやや加速度的に感染者が増えている印象があったので、「これは日本にいた方が安全かも」などと夫婦で話し合っておりました。この時のシンガ出張は2週間で、2月上旬にはどうしてもいかなければならない帝国劇場の舞台があったので、一旦僕等は日本に戻りました。
2月に入り、状況は一気に加速度的に悪化
2月上旬、でもそれほど緊迫感は感じない
僕らが日本に帰ってきたのは2/10で、その後数日間は普通に銀座界隈を楽しく歩いていました。こんな言い方もどうかと思うのですが、かつて僕は「中華系観光客が居なくなった、昔みたいな銀座の街を一回歩いてみたいねぇ」などと嫁さんと半ばジョークとして話していました。ところが期せずしてコロナウィルス騒ぎが発生し、中国政府が海外への団体旅行を禁止したために、銀座の街からはあれだけ居た大勢の中国人観光客が消失してしまったのです!僕は意外にも実現してしまった人通りの少ない中央通りを見て、微苦笑せざるを得ませんでした。やはり滅多なことは言うものではないと言うか、言った通りに実現してしまう現実を見て少し考え込まざるを得ません。
この頃でも僕らは全く危機感は感じていなくて、普通に帝国劇場の観劇の際にもマスクなどせず、咳をする客がいても特に厳しい視線を送ることなく暮らしていたのです。何となく、「日本人が多い場所であれば問題ないだろう、中国人さえ気をつけていれば問題あるまい」と思い込んでいたのです。しかしそれは思い込みでした。
水際阻止失敗、市中感染の恐れ
そんな中、嫁さんは仕事でベトナム・シンガポール10日間の旅に出てしまいました。この頃からでしょうか、海外に行ったわけでもなく中国人との濃厚接触があったわけでもない感染者の事例報告が急増してきたのです。これはつまり、もうトラッキングできないくらいにスプレッダーがその辺を出歩いている状態になってしまい、政府の水際対策が完全に崩壊したことを意味します。どこのメディアもはっきりとは言いませんが、要するにそう言うことです。
「んー、これでは電車に乗ることすら躊躇われてくるなあ」
と言うのが当時の気持ちでした。ちょうど同じ頃に、つい近所にある某宗教系病院でも高齢の感染者が確認され、病院の外来が中止になるという事態も発生しました。もはや一般の人が普通に感染している、そしてそれが身近なエリアにまで拡がっているという状況にやや戦慄しました。この頃から、僕はもう短時間であってもJRや地下鉄に乗ることは諦め、どうしてもいかなくてはならない用事(歯医者)などはわざわざ人気の少ない通りを選んで数kmの道のりを歩いて出かけていました。その頃になるとTVでも外出自粛やら注意喚起を行うようになってきたので、街中を歩いている人は本当に少なくなりました。まるで何かのアポカリプス系映画を見ているような気分でした。
個人的な感染対策を引き上げ、日常生活も面倒に
その頃僕が行っていた感染対策は、
・家からなるべく出ない(空気感染しないっていうけど本当か誰も知らない)
・玄関の外側をレッドゾーン、玄関から内側をグリーンゾーンに区分けし、徹底的に除菌する(家から一歩でも出れば、必ず帰宅後服を全て洗濯にまわしシャワーを浴びる。外出時は紙マスク・手袋着用)
・手紙類は全てキッチンハイターを薄めた液を雑巾に浸し拭き上げ、宅急便の類も配達人と面と向かって受け渡しをしないように玄関前に置く形で対応する
といったもので、ちょっとやり過ぎかしらんと思ってしまうようなものでした。しかし市中感染フェーズに移行した以上、不特定多数の一般人が潜在的にウィルスを保菌しているものとして行動しなければなりません。政府や社会が全くアテにならない以上、少しやりすぎなくらいに自衛するのが一番です。
しかしこういう厳密な対策を行っていると、次第に生活が億劫になってきます。特に閉口したのがゴミ出しで、結局うちは集合住宅なのでゴミ置き場には大量のゴミ袋が堆積しているし、誰がどう触ったかわからないドアノブとかゴミがそこらへんにあるので、とても毎日ゴミ捨てに通えるような清潔な環境とはとても思えなくなりました。
また食品は継続して購入していたために1〜2ヶ月は籠城できるだけのものがありましたが、結局生鮮食品は近くのスーパーに買い出しにいかなければなりません。このスーパーもどれだけ感染対策しているのか全く怪しいもので、普通に窓を解放したりカゴを除菌したりできればいいのですが、どうも日本人はこういう時に思考停止してしまう癖があるので、誰もそんなことはお構いなしに無造作に買い物をしています。
3月になり感染者急増の恐れが
韓国で正直に検査数を増やしたところ、当然の如く感染者増に
3月に入り、今度はお隣の韓国で宗教団体に爆発的な感染者増が起き、それを受けて今度は韓国政府が徹底的な感染者の検査・炙り出しに入りました。その結果、3月6日現在で韓国における感染者数は6000人を超え、韓国からの入国禁止措置をとる国々が100カ国近くに増える事態になっています。
僕は個人的に、単純に考えて人口が二倍以上であり、それ以前から大々的に中国人観光客を受け入れ、かつ感染対策が徹底していない日本における感染者数が韓国以下(現在のところ400人程度)というのはあり得ないと思っています。全数検査しても仕方がない、重症者をケアするのが大事だというのが政府の言い分ですが、今後ウィルスがより凶悪なものに変異する可能性、また市民生活の不安を取り除くという意味においても、本来であれば感染者と非感染者を選別して両者を隔離することは感染症対策の基本のきだと思うのですが、もはやトラッキングできないレベルまで市中感染が進んだ以上、健常者がどんどん感染していくことについては見て見ぬ振りをするようです。
今回の件は複数の視点から見ないといけない
違うところでも少し書きましたが、今回の件については、個人レベル(ミクロ)、社会レベル(マクロ)そして政治力学の3つの視点から見ていかないといけないと痛感しています。よく専門家の人が、「今回のウィルスはそれほど致死率は高くない、若い人ほど軽症でインフルエンザの少し強い程度のものだ」などと専門バカで嘯きますが、それはあくまで個人レベルの話です。たとえ自分自身は軽症で済んだとしても、必ず周囲に感染を撒き散らし、社会全体で積もり積もれば大きな損失となってしまうのです。健常者であれば感染する機会を極力減らすのが一番ですし、たとえ今となっては水際阻止は難しいのだとしても、感染者と非感染者を機動的に隔離する何らかの措置は取って欲しい、というのが市民の偽らざる心情だと思います。
同時に、中国の国家主席による訪日が取りやめになった途端、ビザ無効による中韓からの入国禁止措置が取られることになりました。これはわかりやすい政治力学による後手後手の対応の一例で、もしオリンピック開催と中国への忖度さえなければ、今回の件についてはもう少し先取りした果敢な措置が遅くとも2月上旬には取られ、あるいは北海道は今のような惨状になっていなかったかもしれません。すでにインドを含む多くの国々が日本からの入国を禁止にする流れになっています。今後日本の検査件数が増えるにつれ感染者数も増えていくはずで、この流れはしばらく数ヶ月は継続するものと見るべきでしょう。
最後に:平和で安全な日々はかけがえのないもの
今回の件で、国によってはウィルスとの「戦争状態」にあると宣言しているところも少なくありません。確かに、平穏な日常が破れ日々刻々と状況が悪化するような今日の状況は、あるいは戦争状態にも似た緊迫感を感じられます。ほんの数週間前まで当たり前のように享受していた安全と平和がこのような形で脅かされ、かつ政治力学の犠牲となる市民が増えてしまう状況に僕は憤りを禁じ得ないのですが、一刻も早く以前のような安全な日々が人類に再度訪れるように願って止みません。
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