初の米国出張
この技術商社に転職してから一番最初の出張は、アメリカは東海岸のボストンに決まりました。入社からまだ1か月しか経ってません。いいんでしょうか。まあいいか。
長時間フライトを含む4泊6日のスケジュールでのメーカートレーニングは初体験ながら、充実した学びと今後への示唆を得ることが出来ました。それなりにハードスケジュールですが、もちろん街歩きも遊びもショッピングも忘れずこなしてきました。
工業用粘度計のメーカーの研修会に参加
このメーカーはボストン郊外ミドルボローにあり、その道では著名な流体粘度計の老舗で、弊社は長年日本代理店をやっています。今般、各国のセールスマンを対象に技術トレーニングを行うということで、通訳として営業社員2名と一緒に研修に参加することになりました。
ちなみに僕は、東海岸はおろかアメリカに来ること自体が初めてのていたらくです。出張前にESTAもちゃんと登録し、商材の事前学習も終えて準備万端です。大阪からの同僚は成田で、名古屋からの同僚はデトロイトで落ち合います。
フライトはデルタ航空のDL276便、飛行時間11時間30分の予定。結構長い。しかもデトロイトからボストンまで国内線でまた乗換です。
この頃は米国フライトの時差ぼけの怖さがわかっていなかったので、機内でも普通に映画を2~3本観て、機内食を普通に完食していました。今なら絶対に最初から最後まで熟睡します。
メーカートレーニング
座学はもちろん全て英語

トレーニング風景
工業用粘度計という商材は、基本的に電気部分と流体力学に知識があれば、多少英語が分からなくても、基本的な原理や操作方法は見ているだけでなんとなく分かってきます。
ただし、今回の研修会は営業向けということもあり、かなり基礎的な流体力学から解きほぐす感じなので、ちょっとした大学の講義みたいでなかなか骨が折れました。
しかもこの頃はまだ同行通訳のやり方が分かっていない頃だったので、同僚向けに同時通訳もどきのことを試み、勝手に消耗するありさまでした。
しかも時差ぼけは容赦なく襲ってくるので、眠いったらない。
休憩ごとにコーヒーをがぶ飲みします。
侮れない日本式英語教育
さて、同僚の一人はこの会社の粘度計を売って長いので、結構ピンポイントでいい質問をしてきます。それを僕が英語に訳して講師や他の参加者に伝えるのですが、これが不思議と通じてしまうから、訳している本人も内心驚くわけです。
一例を挙げましょう。
下記が営業さんから事前提出された質問です:
このモデルは何故動粘度なのか?
動粘度とは粘度を同一条件化(圧力、温度)における密度で除した値の事
単位=cst【mm/cm2】
動粘度(cst)=粘度(cp)÷密度(g/cm2)または同一条件化において、一定量の液体の毛細管流出時間を測定し、その時間と粘度計定数から求める。
動粘度(cst)=粘度計定数×流出時間(秒)
密度が変化する液(例:ペイント)は密度変化もする為計測を求められるがどのようにしたら良いのか?
又、一般的に振動式粘度計は静粘度(static viscosity)で計測する事が多いが、何故動粘度なのか?
静粘度の場合、粘度×密度となり一般的に密度計からの入力信号を受け
演算しPa・s×kg/m3の表記となる
日本語で聞かれても一般の人だとなんだかチンプンカンプンな内容ですが、これを訳して事前質問として送って、さらに研修会本番で深掘りさせてくれということです。このうち、cstの定義や計算については先方は百も承知だと思うので、あえて僕は次のように質問を変えました:
これに対し、メーカーのエンジニアから来た回答がこれ:
これでも営業マンの満足できる回答にはなっていないので、実際に講義の質問時間を利用してさらに深掘りした質問を投げかけるわけです。さらに言えば、営業社員は顧客からこういう質問を預かってくるので、きちんと回答できるように内容をよく理解しなければならず、そのため僕に与えるプレッシャーもそれなりになるわけです。
通訳とは、右から左に訳し去ることとみつけたり
ちなみにこれを通訳している僕は、本当に内容を100%理解しているわけではありません。しかし、大学入学時に理系から文転していること(なので理系科目はIIBまで一通りやった)、また大学入試の和文英訳はかなりやりこんだことから、こういう内容を字面だけで訳すこと自体はさほど困難はありません。とりあえず訳して、そのまま伝えてみます。
すると相手側のエンジニアにも通じたようで、さらに話の展開が開けてくる…!
この感じは、今までシンガポールやJICA時代にやってきた英語での仕事とは全く違う感触でした。なんとなく、技術通訳の面白さみたいなものも分かった気がしました。
先人の知恵
そしてさらに話を拡げると、日本人の祖先の知恵というか、
- 自国語の中に外国語(例:漢字、カナ語)をビルトインし
- ひたすら読み書きのみを学ばせる (話し言葉より、むしろ細かいコンセプトを記録可能な媒体で残せる)
ことによる恩恵みたいなものをひしひしと感じました。多分、明治時代や室町時代、あるいは遠く遣隋使・遣唐使の時代の先祖たちも僕と同じようなプロセスで外国から知識を得たのでしょう。そういう意味では、必ずしも当意即妙なオーラルの受け答えができないからと言って、日本の英語教育を全否定すべきではないと強く感じました。
技術の世界だとよくあるんです、口頭だと100%理解出来てるように錯覚しても、いざ文章で改めて見るとそうでもないということが。外交文書や技術文書と全てそうですが、最後にモノを云うのは読み書きの力です。
アフターファイブも満喫
歓迎会に参加する
トレーニング1日目の夜に、メーカー側で僕たち参加者の歓迎会を開いてくれました。レストランに行く途中で歴史的スポットであるメイフラワー号上陸地点があるということなので一緒に見学に行きます。

Pilgrimsの上陸地点
現地には上陸地点に「1620」と彫り込まれた石が置かれ、メイフラワー号のレプリカが鎮座していました。

メイフラワー号
ちょっとした観光ののち、レストランで晩餐が始まります。自己紹介など和やかな雰囲気のうちに行われ、ローカルビールがどんどん進んでいきます。

期間限定、サミュエルアダムスのオクトーバーフェスト。うまい
ボストンといえば、クラムチャウダー(現地の人はチャウダと発音する)とロブスターです。

クラムチャウダ。味が深いです

大盛のロブスター。こんな機会でもないと食べられません
ボストンの街を歩いてみた
3日間続いた技術トレーニングですが、その中でも多少の自由時間が発生するので、間を見て街中を色々歩いてみました。

South Station駅付近の夜景
ボストンは大都会なので、様々な見た目の人が行き交います。港町でもあるので、雰囲気はどことなくシンガポールに似た感じです。
バックベイ地区に行くと、今度は特徴的な赤レンガの建物群に出くわします。さすがニューイングランド地方だけあり、ヨーロッパ的な街並みがとてもきれいです。
近くには有名なバークリー音楽院もありました。
そしてレッドソックス観戦
僕はそれほどでもないのですが、大阪支店の同僚が熱狂的な野球ファンなので行かないわけにはいかないフェンウェイ球場。幸い、ホームゲームが行われていたので内野席の一番安いチケットを買って行ってきました。
当初は結構遠い席だったのですが、レッドソックスの負け試合っぽくなってしまい途中からお客さんが続々帰り始めます。すると優しい球場の職員が
「もっと前の方で観ていいよ」
と言ってくれたので僕らは前の方に移動します。
より間近に下からスタンドを見上げると、結構な迫力です。
試合自体は残念ながらレッドソックスの負けでしたが、雰囲気を存分に楽しめて大満足でした!

途中から前の席に移動してきた「グリーンモンスター」さん
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