解離性同一性障害の治療 ~ある精神療法の記録その3~

counselling心療

第3回 拗ねる自分

□はカウンセラー、■は僕の発言


□この前いろんなお話が出ましたね。今日もあなたの方からお話しをしてみてください。

■前回二週間前ですけど、それから気分の方はフラットな感じできてましてあまり大きい変動はないんですけど、前お話があったように夕方とか調子が悪くなるといったことがあって、少なくともそういう昔の影響があるんだということが実感できたんですけども。で前回ABCの人格で仮にノリさんということでCに名前を付けたんですけど、その名前が決まりました。いいアイデアが浮かびまして。Bはチー坊でいいと思うんですけど、Cをジョンと呼ぼうと思っています。でAをポールにします。私ビートルズが大好きなんで。

□Cをジョンとすると。ああレノンですね。

■でAをポールにしようと思って。要はAはええかっこしいなんで。一見フレンドリーみたいな感じで。で、ジョンは僕の勝手な思い込みですけれども、怒ってるところとか、不信感とかあるんで。ちょっとこの二名は。

□なるほど、いいですね。いやあ、その方が間違えなくて済みそうだ。でBはどうするの?

■Bはもうチー坊でいいと思います。

□じゃ続けて下さい。

■あと仕事とかも以前より増やしてはいたんですけど、ちょっと先延ばしをすることが続いている部分があって、そういう時にAとBとCどう出ているのかなと自分で考えるんですけれども。なんかCの扱い、Cがどうも拗ねているからどうもそういうことが起きるのかなと考えていました。私それに関連して拗ねる癖がありまして、仕事でも拗ねたりとか人間関係でも拗ねたりするので、昔から理由は分からないのですね。で子どもの時には拗ねていいことなんて何もないよとか他人や親から言われたりもするので、体験としてそれも分かっているので、素直な方が得をするということが分かっているんですけれど、何か少しでも物事がうまくいかないと拗ねるということがあて、それをちょっと僕の中でABCのどいつが悪さをしていて、できればジョンとポールとチー坊でどう心が動いているのかを見たいなと思っていたんですが。

□悪さって今おっしゃったけど、どういうことですか?悪さしてるって。

■悪さではないんですけど、拗ねることが止められなくなるので、自動的に拗ねるモードに入ってしまうので、拗ねると得をしないことが多いんですね。

□どういうことですか、もう少し拗ねるっていうのは具体的に言うとどういう行動をとりますか?

■だから…

□横むいちゃうの?

■明らかに自分が得をしないと分かっている方に行ってしまうというか。

□例えば具体的にどんなことがありましたか。

■昔の話でいうと就職活動を全くしないで社会に出ちゃったんですよ。普通大卒だったらそこできちんと就職活動すればいいものを、それをしないで「まあなんとかなるだろ」みたいな感じでやってしまって、あとからものすごい後悔をするような。その時点で変な感じなんですけども。

□他にはどんな例がありますか。

■大学の時も、前受験に失敗したお話しましたけれども、それで大学にほとんど行かなかったですね。遊んでばっかりいた感じで、勉強すればいいものを。で英語も本当は好きだったんで英語をやれば良かったんですが、そのやる気がなくなってしまって拗ねてしまって「もういいよ」みたいな感じで遊びまわっていて。ただ遊びまわっていても卒業出来てしまう学部だったんで、なんか卒業してしまったんですけど。その時の僕は自動モードに入っているので、拗ねてしまっていて、父親と色々あるんで。明らかに拗ねても意味がないのに拗ねてしまうというのがままありまして。大きいところではそんなところですが、普段の生活でも小さいことで、家内との間でもあるんですけど。

□どんな風なところがあるんですか、奥さんとの間では?

■結構、向こうが良かれと思ってやってくれていることを拒絶してしまうことがあるんですよ。例えば今日は天気がいいから遊びに行こうよとか家内が言ったときに、例えばその週に嫌なことがあったりすると「もう疲れているから行かない」とか、明らかに行った方が気分が良くなるだろうに。なんか自分でも言ってることがぼんやりしているんですけど、拗ねる癖がありまして。で解離の話から外れるのかも知れないですけど、それについてこの二週間で考えたことがあって、カウンセリングのどこかでそれについて考えたいなと思って。今日それではないんですけど、たまたまそういうことを考えたことがありました。

□いや、話したいことってこれ以外にもあるんですか?

■ああいえいえ

□このことだってね、すねる話ね。ちょっとこれは大事なことと思うんですけどね。

拗ねるということ

本来のすねるっていうのは、あの甘えたいときに甘えさせてくれないときに起こす子供の反応でしょ?で本来もらうべき報酬の反対の行動をとることが多いよね、例えば「これ食べたら」って言ったら「いや僕そんなのいらない」と言ったりするのが拗ねですよね。

■でも僕子供の頃それがすごい多かったので、両親に対する反抗手段として拗ねを使っていたんですけど。で、すねていると相手を攻撃できるというか。自分が結構無力なところで、すねていれば親をコントロールでもないですけどもというのがあったと思うんですが。でもそれは大人になっても親が目の前にいなくても、誰かを相手にしているわけじゃなくても自動的に出てきてしまうという癖があります。それで悪さと言う表現を使ったんですけれどもこの癖はまあできれば避けたいでもないですけど。

□笑

■それが怒っているジョンだと思うんですけれども。

□そうですか?僕なんかBの感じがするんだけどね

■いや始まりはチー坊なんですけれども、ただ大きくなるにつれていろんな経験をしていく上でジョンが混ざってくるというか。

□どっちかって言うとCのジョンは怒っているとか不信感を持っている自分だとお考えになるといいかな。まぁ要するに子供の頃に出しちゃいけない感情の1つが怒りだったと思うんですね。で、怒りを出すとろくなことが起こらないから、理不尽だと思ったことでもしまっておくんで。あんまり拗ねるという感情じゃないんだよね。すねるっていうのは、甘えたいけれども自分としては充分に甘えさせてもらえないって感じた時に、横を向いて「いらないよ」と言うんじゃない?だから子どもの構造に近いでしょう。だからBのバリエーションじゃないかなと思うんだけれども。就職活動を考えてみると誰かの期待があったんでしょ。お母さんですか?就職してほしいっていうのは。

■いやそれは何も言われなかったんですけれども

□いや言うか言わないか物理的にどうかは別として、あなたは例えば就職したら誰が一番喜んでくれそう?

■それは母かもしれないです。

□はい。だから就職するとお母さんが喜ぶでしょう?だからそれに対して反対の行動をとるわけでしょ?

■あーなるほど

□ですからあなたはお母さんには依存感情を持っていて甘えたい気持ちがたくさん持っていたけれども、何か的確にお母さんがそれをくれなかったって言う事で拗ねてんじゃないかと思うんですけども、これはBですね。遊ぶでしょBだったら。Bは子供だから遊びたいんで。現実の困難に対して義務を果たすと言う事で親を喜ばしたくなければ遊ぶんだと思うんですね。そうなんだと思うんですね。でCの自分、つまりジョンはまだあなたにとってはどういう人格かあまりピンと来ないし、多分あまり意識しては出てこない人格なんでしょう?

■おっしゃる通りです。ですんで前回の面談でも出していただきましたけど、どうも不信感があるというか前に出てこない。だからチー坊は出やすいと思うんです。

□そうそうそう。

■家内とも遊んでいるし、僕の子どもっぽいところって出やすいんで、人によっては可愛いと言われたりするんで。だからポールとチー坊はわりかし出やすいんですけど、どうもジョンとして意識して出すのはなかなかというのが二週間の中でもありまして。

ジョンは敵ではない

□そうね、これはねあなたにとってとても大事なポイントでね。あなたにちょっと聞くけど、ジョンが出てくるとまずいとあなたは直感しますか?ジョンはなんで出てくるとまずいんでしょう?

■前お話ししたのは、人を攻撃してしまう?何かを破壊してしまう?だから父親と同じようなことをしてしまう?

□そうなの?直感でいいんですよ。

■怒りもそうですね。

□父親と同じことをしそう。ふーん。

■そういうのが嫌なんで。

□それが嫌だとジョンが嫌いになっちゃうよね。どうかな。ジョンはイコール父親かな?

■いやあ、イコールじゃないと思いますね。

□そうでしょう?イコールじゃなさそうでしょう。お父さんの分身じゃなさそうだね。むしろジョンはお父さんに腹立っている自分じゃないですか?

■そうです。

□これ大事なポイントですよ。敵じゃない。

■ああ(笑)そうなんですよね。だからまだそこを誤解しているんですよね。だから出てこないんですね。

□うん、怖がっているんですよあなたが。で怖くないと分かることが大事だと思う。正当だったんだ怒りは。当たり前じゃないそんなの。あなたが受け入れていい感情。そんなねぇ、踏んづけられたり蹴られたりしていいことしてもらったと思うのは、変態です(笑)

要するに痛みがあって、そういうことを自分は何もしていないのにやられたという感じが当然子ども時代にあるわけですから、当然怒りが出てくるんだけども、ただ怒りの自分を出したら何をするのか分からないというのがあるんだあなた。だから積もっているでしょう怒りが。積もっている奴を一度解放したらぶわっと爆発してとんでもない人間になるんじゃないかと怖いからこうして閉じ込めて息が出来ないこういうところに閉じ込めてしまう。

だけどこれは、喜怒哀楽のうちの怒だけ抜ちゃったら人間としてちょっと問題がありますよね。だからCも仲間だという風に、ジョンも仲間だと思わないといけない。けどあなた少し変化があるのはさ、ノリさんじゃなくてジョンっていう名前を与えたでしょう。レノンというのは反骨精神が旺盛で才能がある人間じゃないか。あなたその人の名前を最高の名前を入れたんだよ実は。僕はそう思っている。

■僕はジョンレノンが好きですから。

□リンゴにもしても、ジョージハリソンにしても、ジョンが傑出しているよね。二番目がポールマッカートニー。多分あなたが尊敬している人間にジョンを与えたという意味がある。単に反抗だけじゃないんで。だと思いますよ。

■おっしゃる通りで、僕の中でジョンとポールで、これはいいと直感的に思ったんで。

□そうでしょう。だから偶然ではないのでしょう。

■そうなんです、大学時代もコピーバンドとかやって大好きだったんで。

□ああそうなの。

■僕の中ではそういうことがありますから、本当に。社交好きでええかっこしいなところはまさにポールみたいで、でそういうところが自分の中で嫌いなところもあるんで。

□僕はね、まずあなたの段階はね、ジョンという人格が正当であるという感情を持ち受け入れるところから始めるといいと思う。腹が立たないのはおかしいんだと。で、腹が立つ自分というのは弱いですか?強いでしょう。だからあなたが持ちこたえることが出来たのはジョンのせいなんだと考えるとよい。だからジョンはあなたの中の一部ですから、それはちゃんとあなたが自分の人格のメンバーとして受け入れて行けばいいんじゃない。でこの話はね、ジョンも聞いているんです実は。ここでの会話はみんな聞いているはずです。だからちょっとね、ジョンさんの意見と感想を聞いてみませんか。

■はい、わかりました。

□あなたの敵じゃない、あなたの分身なんだ。敵のはずがないんだ。解放してあげるとメンバーになってくれれば、彼はやれると。そういう風にお考えになるといいんじゃないかな。じゃちょっとやってみましょうか。

(自我状態療法的な作業)

Cの再出現

□ジョンさんお話し聞いていたと思うんですけど、気持ちを私に教えて下さい。どんな風に思いました?

■混乱してるんですよ。

□いいよ、混乱したままの話をして。

■(沈黙)

□びっくりしているのかな?

■そのびっくりはしていて、要するに誰も気付かなかったのが引っ張り出されようとしているのが

□だってあなたははじめっから存在してる。引っ張り出されたってんじゃなくて、あなたは生きる権利もあるし価値もあるんです。

■で他の人格は俺が色々やっているのを分かっていないんで。

□そうだ教えてあげないと。Aさんに教えてあげます。うんそうだね。教えてそのやってることをちょっと。

■普段の生活っていうのは色んなことは俺がやっているから。

□そうなの。僕はそれを分かっていたの。あなたが力だと思っていました。あなたがいなかったら崩れちゃう。理解されてなかったんだ。

■力がないんですよ、AもBも。

□そうなのね。あなたは力を貸してあげられますか?

■今までも貸してきましたし。

□そうだよね。ただAとBのあなたが、あなたを信頼して受け入れるっていうことが大事だね。それを聞いてますから大丈夫です。他のメンバーも聞いてます。三位一体ですからね。今まであなたがなかったのが不思議なんで、中に入ってあげればいいんです。

■中に入る?

□そう。そうすれば、力が出てくると思いますね。人間に対して不信感を持つのは当然ですよ、人間に対して怒りを持つのは当然ですよ。やっぱりそれはすごく大事なことだと思う。

■いやでも、ポールは、Aは先生の前とかでもすごい綺麗に見せようとする。で、綺麗にする必要なんかないって俺は思ってるし、妻もそういうことを言っているから。なんだけど、でも綺麗に見せようと。

□怖いからですよAは。怖かったんだ。やっぱり体裁でいい子をするってわけじゃなくてね、怖いから波風経たないように立たないように生きるためにAも必要だったんだ。だからポールも必要でジョンレノンも必要だし、やっぱりBの子どももチー坊も必要なんだと。皆必要なんだと考えるのがよろしい。人格ってそんなもんなんです。皆大人に見えてても子どもの部分も持っているし、怒りもくるし悲しみもくるし優しいし。矛盾しているのが人間存在でしょ。それが矛盾がどうしてっていったらそういう仕掛けがあるからですよ。でも考えてみれば矛盾じゃなくてそれが普通なのかもよ、混在しているっていうのがね。

■俺が出入りするのは結構多いんだけれど、そうすると記憶が途切れちゃう。

□そうみたいだね。それはあなたのことを受け入れてないから途切れちゃうんですよ。だからお互いのことを受け入れ合うのが大事かな。だから怖がってんでしょAは?Bも怖がってんのね。多分怖がってんのは何するか分からないので怖がってんだと思うんです。それからあなたがAにちょっと不信感があるんだ。

■気持ち悪い、嫌い。

□なんで嫌いなのかって言ったらあなたの反対だからでしょ、本音言わない、きれいごと言って波風立たないようにしている、あいつちょっとずるいぞってことになるわね。でもその狡さも人間にとっては必要だから、それはあなたも受け入れてあげればいい。

■もちろん。

□ね、お互いに受け入れると。三位一体っていうのはそういう意味なんです。それから子どもみたいに遊んでみたいとか拗ねてみたいとか、拗ねるというのは要するに甘えたいということですから、素直に甘えるBになればいいんですよ。素直に甘えられないんだ。例えば奥さんが優しくしてくれたらありがとうって言える自分があれば十分なんだ。

■そういうときもあるけど、そうじゃないときが困る。

□どういうときですそれは?例えば?

■いい嫁さんだから大体そういうのは受け入れてくれるけど、受け入れてくれないときがないけど、素直になりたい。

□素直になりたいんだ。あああなたは結構素直なんだそれじゃあ。Cのあなたは。拗ねないもんね。直球主義でしょう。

■やりたいことはやりたい。

□何がやりたいですか本当は?

■何だろう…。でもやりたいことはやってきたから。仕事とか。海外に行きたいって思ったらやってきたし。でももっとやりたいなと思う。

□そうか。

■それが今はコロナで無いんで。

□僕の提案はね、三つの自分が話合うことをお勧めしたいんだよ。話して。それから決めたいことがみんないっぱいあるのに、皆冷たいコンクリートの建物の別な部屋に住んでいるようなもんじゃん。互いによく顔を知らないんだよ。いるらしいとか。

■それも先生から前回聞いて、でも話がまだうまくできないんですよ。

□まだ出来ないね。だって今日は三回目なんだけど、その話をしてね。お互いがいるらしいって分かったくらいだから、まだお互いの部屋の通路が開かれてないさ。

■やっぱり。

□まずいるっていうことが分かって、いるんだったらコミュニケーションが取りたいながないと難しいんじゃないの。でもこれはAもBちゃんも聞いてますから。それが変化の始まりだと思う。皆自分だと考えましょう。別々の自分じゃなくて等しく自分なんです。だから平等なんです。差別はしないほうがいいんだ。Bの自分は軟弱とか子供っぽいとか色々あるかもしれないけれども、でも子供らしさというのは結局あなたの良さでもあるし、可愛げがあるというところもいいしそれから色々なことに関心を持つというところもBの特性なんですよ。だからAの自分がないとやっぱりこれまで生きてくるのが難しかったし、Aの自分がなかったら奥さんとも巡り会えないし、あなたがいなかったら多分退学していたんじゃないですか(笑)

■よくご存じで(爆笑)

□そうすると奥さんとも出会えないんだ。いろんな形で自分が必要だと分かるでしょう。でね、これから明るいところにいってAさんと話します。でもあなたも途中で出てきて下さい。

(自我状態療法的な解法)

ジョンの悲しみ

□聞いてましたか?怖がらなくて大丈夫ですね。

■どうもどうも。

□不思議でしょう?

■こちらに来るまで色々考えているんですけど、なんか出てくるのは不思議ですね。

□大事なことはね、Cのあなたが味方だということがあなたに分かったことですよ。Cが見えないところであなたに力を貸していたんだと、これも大事なポイントね。だからCは決してAやBを物足りなくは思っているけれども抹殺しようとは思ってないですよ。今の話で分かるでしょう。だから全部自分だと。自分の特性の中の一つだとお考えになればいい。人間っていうのはもともとそんなに一枚板じゃないですよ。ただ全体として統一が取れていればいいだけのこと。あとはジキルとハイドみたいに人が急に変わるんじゃ困りますけど、一貫性があればいいじゃないですか。でもCの声が聴けてよかったでしょう?ジョンの話が聞けて。

■中々話が聞けないんで。

□でもねぇ、出てくるって何回かやっていると、お互いに話が出来るようになってきます。僕はでも、考えた通りの人だったね。あなたを助けているって言ったじゃん。でやっぱり一生懸命やってたんだけど、だれもその努力に気が付かない。

■あのオートに入っちゃうんですよ、意識がオートに入っちゃえば知らないうちに家事も勉強も自動で出来ちゃうんで、多分これがジョンだと思うんですけど。それが多分、前もお話ししたんですけど、これがシームレスに入れ替わるというのがそれかなと思って。ジョンなんでしょうね。Cなんでしょうね。ストレスの量や状況に応じて手を貸すのがジョンなんでしょうね。

□それが分かったというのが今日大きかったですね。それが分かったというのは、ジョンの働きをあなたが受け入れたってことなんです。今までは漠然と恐怖の存在だったのが、実際はそういうことをやっていたと。それからジョンの悲しみというのは、自分がやっていることを誰も理解してくれない知らないということ。それがあったかもね。それが、今日一つバリアが取れたんじゃない。

■ありがとうございます。なんかポールがやっていると思っていたんですけどジョンなんですね。

□そうなんですね。

■ポールが適応的で色々他人と折衝とかできるからそいつかなと思ったけど、実際の仕事はジョンなんでしょうね。

□結局Aの自分というのは他人とうまくやっていくために自分に嘘をつかなきゃいけない。それをCのジョンは批判している。でもCの通りになるとちょっと人間関係は厳しくなっちゃうからあなたとタッグを結べばいいわけですよ。

■そうするとレノン=マッカートニーになるわけですね。

□そう、ビートルズだ!(爆笑)

過去は切り捨てていく方が健康になれる

過去の嫌なもののためにそういうものが作られてきたわけだけども、僕たちは過去に戻って修復するって考えるんじゃなくて、過去はそういう物語であったけどもう要らないねっていう形で切っていく方が多分健康になれる。

■ああ。で多分そこで発達障害のタイムスリップが出てきていつもまた思い出すんですけど。

□それはつらいね。終わったことっていう風にしていかないといけないなあ。思い出してもいいけども、「あれもう済んだよね、今じゃないよね」って。大事なのは今ここでのこと。今ここでっていうことが中心になってきたら、過去のことは単なる物語の出来事として、歴史的な物語として考えられるでしょう。

■悪いことに、最初にお話ししたんですけど私歴史が好きなんですねぇ。良くないですねぇ。

□なるほど。まあ歴史好きでもいいんですよ。歴史は現在を理解するために我々は歴史を学ぶんですから。僕も子ども時代のことを聞くのは歴史と同じですよ。昔のことを知らなければ現在は理解できませんから。

■おっしゃる通りです。だから僕も特性として多分発達障害の気があって、タイムスリップがあって、それがあって歴史が好きだったんだろうなと思うんです。昔のことを読んで、自分のことじゃないのにありありと想起できるっていうのか。

□なるほど。やらなきゃならないときにはジョンがやっていたんだね。

■多分ジョンには負担が大きいのかも知れませんね。

□そうですだって一人でやっているから。

■だからかすぐ寝ちゃうんですよね。疲れちゃいますよね結構。

□だからそこまでやらなくていいよとかいう自分がなきゃいけないでしょ。もうこのくらいにしといてやろうとか。まあ60点主義でいいんで、良くても70点主義でやればいいんで。良くても70点で満足しようよっていうのをあなたが教えてあげないといけない。

■であの発達障害の過集中の話も出てくるんで。

□そうそうそれもあるからね。

■だから発達障害の本を読めば読むほど、解離の方のABCそれぞれも違うことを思い出しているなあと思うんですよ。でそれがぶつかっててさらに発達障害が入ってきてタイムスリップが強くなってぐしゃぐしゃになるというのが多分今僕が感じている混乱だと思うんですよ。ですんで前より混乱しているというのがあって、それをうまく言葉にできなかったんですけど。

□Cも混乱って言ってたでしょ初めに。なんかどうして、すごく戸惑っていましたよね。あの戸惑いはなんでしょうか?…ああ言ってたじゃない。「僕は出ちゃいけないと思っていたのに引っ張り出された」って。だから彼はずっと黒子のつもりでいたんじゃない?黒子じゃだめだよ。ちゃんと三位一体ですから。

■でもポールは気持ち悪いんですよねそれが。黒子が出てくるのが。

治療とは化学反応、精神療法は触媒

□あのね今日の話でポールは変わってくると思うね。少しずつ、変化は化学反応は少しずつ進行する。で僕はつくづく思うけど精神療法というのは何だろうかというと触媒なんだね。化学反応を助けるだけ。

■いい得て妙ですね。

□触媒がないと化学反応が進行しないということがあるから、それだけだと思うんだ。化学反応はあなたの内部で起こるから。それが少しずつ起こってきます。だってまだお会いして大して経っていない。Cは本当に日陰者だったんだ。目立たないようにしていたんでしょ。常にね、三つの自分は全て自分だとお考えになることを忘れなければ大丈夫。全て自分なんだ。自分がそれぞれの特性。混じればなんてことないんだ。統合っていうと一本になることを考えるんですよ、大体それで治療が失敗するんだ。大体皆さんの、他のセラピストが考えるのはAに統合しようとするんだ。そうすると無理が来るじゃん。結局はBもCもいないで来頂戴ということだからうまくいかなくなる。だから僕は公平ということが大事だと思う。

人間はシチュエーションの中で人格が変わるんですよね。例えば上役の前にいるときは相当構えないといけませんし、相手に失礼にあたらないよう警戒しないといけませんよね。だけどガールフレンドのそばにいる自分はもう少し甘えたいとか言葉遣いも違うし。それから嫌な奴と喧嘩してる自分も、社長の前の自分とは違うよね(笑)でも皆自分でしょ。統合っていうのはその程度のものだと思う。みんな一枚板だったら病気です!一枚板でいつも金太郎あめみたいな同じ人格が出てきたらおかしいと思う。無理をしない自分であればいいわけですよ。無理をすれば不自然な自分が出てくるわけで。無理じゃない自分であれば色んな特性が出て大丈夫ってのは自分が変わって問題ないことになる。

■僕にも思い違いがあったので、多分一つにまとまるみたいな。

□まとまるっていうのはそんなことなんだ意味はね。シチュエーションによってC的な自分がうんと強く出ることもあるし、B的なものが増えてくることがあるし、A的なものも出てくる。まあ分かりやすく言えばAは社長さん向け、Bは奥さん向け、でCは仕事をしたり喧嘩をしたり。勝ち抜こうとしたりするときの自分。皆必要じゃないか。切り離したらおかしくなる。お互い認めあうと違和感なく溶け合っていく。そんな風にお考えになるといいね。今日はこれでだいぶ進んだね。

(了)

第三回の感想

さすが力のあるカウンセラーの方は違います。僕が抱えていた諸問題に、「拗ねる」というキーワードからズバズバ切り込んで来てくれました。今回のCは間違いなく怒りを抱えたCが出現して色々話をしてくれ、かなり進捗ある回となりました。

コメント