解離性同一性障害の治療 ~ある精神療法の記録その6~

counsellingメンタル
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第6回

□はカウンセラー、■は僕の発言


□えー今日もあなたの方からお話をしてみて下さい。

■前回の面談の時に先生から「母親に甘えられなかった」というお話をいただきまして、そのことを反芻しながら2週間過ごしたんですけど。前回の直後はちょっと感情的に揺れがありまして、なんか悲しいって言うか悔しいというか、物語の中で自分が生きてきたところがあって、自分の思いが届いていないところがあったんだなというところをどちらかというと悲しむような感じで、ちょっと精神的に不安定という感じがしたのですけれども。でもまあそれも結局過去のことであって、目の前の現実とは関連はあるにしても目の前の現実ではないということで。逆に小さい頃母親とどんな関係があったかなというのを思い出しながら時間を過ごしまして、色々な小さなエピソードを見つけたりはしたんですけど、やっぱり甘えられてはいないよなというところと、きつく対応されたところがあるんだろうなというところが見つかったので、それが自分としても収穫ではありました。

だから悔しい悲しいと怒りというか、そういうところが出てきたので、真犯人は見えないところにいるっていうお話がありましたけど、頭では「母親もかなり影響がある」っていうのは分かっていたんですけど、以前のACとかあの辺もそうですけど、本を読んで父親だけが問題じゃないというのは分かっていたんですけど、ただ改めて専門医である先生から言われると、なんか腑に落ちたというか。

□目に見えるものは対応できますからね。

■色んなエピソードを思い出してきて。

□だんだんほんとはね、甘えられなかったのはあなたが悪いからじゃないんですよね。子どもというのはなんか自分が甘えられないのは甘えさせてくれないお母さんだと自動思考みたいなもので自分が悪いという風に考えてしまうんだね。でもお母さんにそういう能力があまりなかったとお考えになれば、お母さんの多分意思ではないんだねこれは。でも、子どもの身にとってこうするときっと気持ちいいだろうとか自分に対してOKが出るとかリアルタイムにわかりにくい人だと思うんだよね。すると思う通りにならないと多分怒りが出てくる人だと思うので、怒りが出てきたときに自分はやっぱり愛されないんじゃないかという恐怖感があるし、お母さんを怒らせないいい子でなくてはいけないというのが相当あったと。お母さんに気に入られるいい子であるためには、本来のあなたじゃ困るので、自分の中に怒りだとか悪いことをしてみたいとか特性がある自分は隠さないといけないんだよね。それが解離だ。だから自分を取り戻すプロセスは、これが重要なんだけど物語があって出来たんだから、そういう特性も自分に合っていいんだという風に受け入れればいいんです。悪い自分も自分なんです。悪い自分はXXではないんです必ずしも。受け入れないと感じた自分がbad meなんです。受け入れられると感じた自分はGood meなんで、これも病理なんです。だからBad meも自分だって受け入れるっていうことは、Good meも病理だと分かるとセットになっているということなんです。無理してるわけですから、常に悪い自分を自分の背中に隠そうとするわけですから、これを健康とは言えないでしょう。自分が自分であることで十分やれるはずなんだけども、恐怖感があるって。友好的にならないといけないし、相手の機嫌を損ねないようにしないといけないですし。それをずっとやっていれば、自分じゃなくなりますんで、最後はやはり怒りが出てきたり爆発したりします。

だからGood meで生きてきたというのが病理のスタート点だと思うんです。

■妹に「僕は母親に甘えられていたかい?」と聞いてみたんですけど、3歳離れているんですけど少なくとも彼女から見れば甘えられているようには見えない、と。もう小さなお父さんだという感じだったそうなんで。

□それがお母さんが安心するあなただ。結構つらかったと思う。

■いや辛かったですし、今も思い出して辛いというか悲しいというか、悔しい感じですね。なんか取り戻したいというか。なんか意図的じゃないというのがさらに悔しい感じですね。

□でもこれからあなたは取り戻すことが可能なんですよ。で、今日はあとでジョンに出現してもらって色々聞いてあなたの中に入ってもらう、と。結局Goodというのは善ではないんですよね。他人に受け入れられる自分なんですよね。これが分かって来れば、もうちょっと楽になる。人に受け入れられるというのがいいわけではない、自然ではないということ。ところであなたは、今のあなたは多分Aのあなただと思うんだけども、Aのあなたからみたジョンの特性についてお話しいただけますか?どんなのがジョンだとあなたは思っているかと。そこから話を進めたい。

Cのジョンはどんな人?

■ジョンは力を持っているんですよ。前も申し上げましたけど、僕がAがポールが手綱を離したときになんか知らないうちに仕事をやってくれたり、なんか気づかないうちに直感が鋭い人だと思うんですけど、こうした方がいいよという場面があって、それに従うと必ず人生に変化があることが多くて。いいか悪いかは分かりませんが、何がしかの成果があるアクションが取れていることが多くて、それがジョンのパワーだと思うんですけど。それと学校の勉強も僕がやっているんじゃなくて、ジョンがやっているんだと思うんですね。なんでこんな表現知っているんだろうということが良くありまして。でそれはジョンが学んだことが出てきているんだと思うんですけど。

(ここ大英博物館の話)

□あなたの進路上で重要な決定の助言というのは何を覚えていますか?

■今の家内と付き合うときに「好きだと思うよ」って僕が言ったんですけど、当時の状況的にとても言えない感じだったんですけど、「今言わないとダメだよ」ってジョンが言ったようで。それで嫁さんもびっくりしたみたいなんですけど。で僕らは当時同僚で、言うとまずい状況だと思うんですよ。それが上手くいかなかったら同僚として非常にまずい状況になるんで。

あと県庁でシンガポール派遣の話が来た時に、僕はやる気がなかったんですけどジョンが「やってみれば」と言ってみたような気がして。それで選考試験で受かったんで。なんかそういう人生がガラッと変わるときに出るというか、僕じゃないと思うんですよそれは。

□Aの自分はもうちょっとある意味で慎重なんだね。怖いんでしょ。おびえているんだよね。

■うちの嫁さんは頭が悪い大人って呼んでいるんですけど。ちょっと鈍い慎重な感じの…。

□慎重なのが分かるでしょ、Aの自分が。お母さんの機嫌を損ねないのがAだから、最優先は人の気持ちが離れたり、嫌われたり、それから失敗が追及されることを回避することが最優先だと思います。だからちょっと臆病だね。そういう意味でジョンの方が後押しをしてくれるわけだね。前の奥さんとうまくいかなかったのは結局どうだったんでしょうか?

結婚と離婚と再婚

■ですんでもともと結構喧嘩したりとかやり合ったりとかあって、僕とシンガポールにいるときに僕が適応障害で職場に行けなくなっちゃって、結構休んだりとか現地の病院に通ったりしているときに、ある時福島に1か月ぐらい帰っちゃったんですね。その時にまた事件があって、出張中に同僚が自殺してしまったんですね。僕が一番いてほしいときにいてくれなかったというのがあって。

□あなたは単身で行ってたの?

■いえ二人で行ってましたけど、向こうはずっと専業主婦って感じで。で父親も県庁職員で、祖父も公務員でそれで僕と結婚したみたいなのもあって。まあ合わない部分も出てきたんで、でそういうのも含めてタイミング的にも。嫌になっちゃって福島にかえっちゃったんだと思うんですけど。で僕も若かったんで、気性が激しかったので。それが前の結婚が終わる少し前の話ですね。

□どっかやっぱりフィットしないところがあったんじゃないの。

■どっちかというと僕がお兄ちゃん的な感じで、だから同じですよね弟や妹との関係の再現みたいな。で当時の僕の収入なんて知れていたんで、働いてもくれないから僕は残業してお金を作ってみたいな。甘えることはできなかったというか。で結婚してシンガポールに行けとか言われたりして、そもそも海外なんて行ったことないですし。慣れないことをしてるんで、っていうところで前嫁は苦労したみたいですけど。僕はそんなに苦労しなかったですけど。

□あなただって離婚する気持ちになったとか今の奥さんに惹かれたとか、決定的な不満がないとなかなか踏み切れないと思うんですね。何なんでしょうそれは。あなたの何かを理解するために決定的なポイントかと思っているんですけどね。罪悪感とか考えないで、彼女が悪いとかそういうこと考えないで、あなたにとってでいいんです。自分の見た世界の中で彼女に対して失望がなければ離婚まで行かないと思うんですね。なんでしょう?

■僕から見ると、自分と母親の関係を再現しているというか、面倒を見ているという感じがあって。僕の中では。

□彼女がどう思っているかはさておき、あなたの内面の感じとしてはそうなのね。面倒を見ている感じがあったの奥さんの?

■甘えているという話もそうですけど、甘えている感じは全くないですね。だから結局お金とかも全く入らないで僕の収入でやりくりですから、あちらは同い年でその時26、27でしたけど向こうは家にいて家事洗濯をやるといった感じで。

□働かなかったの全然?

■全然ですね。働いてほしいなというのは何度も言ったんですけど。向こうの母親は専業主婦で、そういう専業主婦像じゃないですけどあるみたいで。だから僕的に結構結婚している間辛かったんですよね。経済的にもつらかったですね、手取りでXX万くらいですから。

□そうか。公務員って安いもんね給料。

■結局公舎の家賃こそ安かったですけど、他の生活費があるんで、僕は残業代がないと生活が出来ない感じだったので、作らなくてもいい残業を作って残業をして家に帰っていた感じで、それを何年も続けていた感じで。

□残業で補っていたのね。それが分かってくれなかったということですか?

■分かっていなかったと思います。公務員と結婚したから安泰だじゃないですけど、家系的にもそういうのがあるみたいで。なんかすごく疲れていたのを思い出しますね、当時のことを思うと。

□結婚するのはどうして結婚まで踏み切ったんです?そういう気持ちになっているのがあるでしょ。

■当時の勢いですかね、若かったのと職場が福島から東京に移るっていうタイミングで、「私のことを置いていくの」っていうのが当然あって、そうして東京で新しい生活を始めてしまっても良かったんですが。結婚してあげるではないですけど。

□そんなに燃えて結婚したわけじゃないんだ。

■そうでもないです。

□波風立たないようにしていたんだ。彼女は何してたの?

■工場の事務員とかやっていましたね。それで僕は実家が嫌だったので、実家を出て。祖父母の面倒を見るっていうんで毎月XX万円とか家に入れていたんですけど。僕が東京に行く直前に二人とも亡くなって。じゃあ新しく東京に行くから、じゃあみたいな感じで流れで結婚しちゃったんですよね。

□あのね、もう一つ今の奥さんと前の奥さんとの一番の違いは何ですか?

■違いは色々ありますけど、前の嫁はちょっと変なところがあって、やっぱりこっちの世界というか、なんだろう、今の家内は自分を持っているんですね。僕が何を言っても動じないで、僕のことを甘えさせてくれるんで僕は精神的に頼りにしてますし包まれてる感じがするんですけど。前の家内は僕が頑張っている感じで、でもかえってこないところが多いし、なんか鈍いし、発達障害なんじゃないかなということを思ったりするんですけど。

□お話しを聞いてて一番僕が感じているのはね、どこか前の奥さんはお母さんとの関係の相似形な気がするんだよね。それで今の奥さんはちょっとそれと反対の傾向を持っているんじゃないの?そこであなたは再婚を意識したんじゃないでしょうかね。多分それを発見したのはジョンだと思うんだ。そういうことだと思うんですよ。少し僕にも謎が解けてきたんだよね。

■だから当時うちの妹とかが「よく似たような人を見つけてくるよね」って言ってたんで。

□そういうことだ。だからお母さんが気に入りそうな女性だと瞬間的にあなたが感じたんじゃないかと思うんだね。だから小さなお兄ちゃんがそのまま延長したような結婚をあなたしたんだね、僕が頑張らなきゃっていう。恋愛とか結婚というのはどこかそういう意味で一種の転移の延長にあるということがよく言われるんですね。過去の問題のそのまま相似形で受け継ぐか、それと反対のものになるかって言われるんです。でも似たような感じはお母さんの時と違うタイプで、あなたが得られなかったものを今の奥さんが与えてくれるっていうことだと思う。小さな父親を演じなくて済むわけね。まだどっかあったでしょう。

■ありました。最初のころは今の家内でもありました。でもそれは崩れていって、突然僕が子どもみたいに泣いたことがあって、それがBのチー坊が出てくる時だったと思うんですけど、それを今の家内は良く知ってて、「あれがチー坊君だったんだね」って言いますけど。

□そうですか、どうです最近Bはもうあんまりでなくなってきてませんか?

■そうですね、生では出なくなって来てますけど、出そうと思えば家内の前では出せるんで。

□延長にあるんでしょう、Aのあなたの状態とBのあなたの状態が繋がっていればそれでいいんだ。人間というのはどっかモザイクみたいなところがあるんで、完全に一体なわけじゃないんですよ。統合ってのはそんなもんだと思うんです。だからあなたが子どもの一部を残しているというのも、不健康なわけじゃなくてそれがあなたの魅力だと考えるとよろしい。そういう風になってきたわけね。出るけども連続体なわけね。そうすると解離じゃなくなるんですよ。治ってきたじゃない(笑)

■おかげさまで(笑)

□ジョンも対象化出来ているということがあなた分かってきたんで、連続体の始まりなんです。

■始まりなんですね。

□自分のものとしてあなたはジョンを語っているでしょうに。そんなことが統合なんですね。これがね安定して自分で感じられたら治療は終了です(笑)要するに市民権を皆さんが持つと。皆市民権を持って、Aもたまには必要だねとか、対等合併になるのが大事。上下関係じゃなくて、皆対等な関係で自分の中にあると。そういう特性があるんだということが感覚として分かれば治療は終了。見えてきたでしょう。会社で言えば対等合併です。だから今日はまあジョンを出してもあなたそのものだからもうね、そんなにビックリすることが起きるとは思いませんけど、最後に詰めだけやっておきましょうね。であなたもそれを聞いていて、ジョンにもそれなりの辛さがあったんだと思うんだ。それを聞いておきたい。あなたからみたジョンは強力で力強いというのがあると思いますけれども、ジョンにはやっぱり辛い思いしたり悲しみがあったと思うんですよ。それは共有した方がいい。じゃあやってみましょう。

これからジョンさんに出現してもらいます。

(精神療法的な作業)

ジョン三度現る

■ずっとさっきの話を聞いていました。

□あなたの辛さの話も聴けるといいな。

■辛さの話でいうと、俺が子どものころからずっと辛かったんで。

□何が辛かったのかちょっとお話しして下さい。

■課せられたものというか、こんなこと言っていいのか分からないけど、なんで産んだんだっていうのが子どもの頃ずって思ってて。俺はもっとうちの両親に年を取ってから産んでもらいたかった。若すぎて何も準備が出来ていない感じで、なんで俺を産んだんだっていつも思ってて、それが俺の子どものころの思いで辛かった。

□具体的にどんなことを覚えてますか?その辛さ。Aさんにも分かるように話してくれませんか。

■細かいことは覚えていないけど、一回家を出たときに漏らしたことがあって、ものすごくその時におびえた自分がいて、家の中に戻ったら怒られるかとすごく恐れて、でも家の中に帰ったら母親が逆に機嫌が良くて「なんだ漏らしちゃったんだ」って感じで軽くてすごく驚いたことがあって。どれだけいつも叱られていたのかということですけど。

あとあったのは台所で味噌汁に間違って洗剤をいれちゃったことがあって、普通の家庭なら素直に親に言えるはずなのにそれを言えなくて飲んじゃって吐き出したことがあるんです。

□叱られることが多かったし怖かったんだね。

■そんなことばっかりなんで、要らない子どもまではいかないけど。一応長男だから。思ったのは昔母親が自分をなんて呼んでいたか分からない。でも名前で呼ばれるのが嫌い。いつも両親とも怒った時しか呼ばないし、友達は呼んでくれないし。自分の名前が嫌い。でもジョンって名前を付けてもらったのはいい感じ。

□そうなのね。ジョンが生きていてもいいんだって思うにはどんな条件が必要だったの?

■いい子でいること。で成果を出して、下の二人の面倒を見て。必要があれば両親の間をちょっと取り持って。

□調整役やってたんだ。大変じゃない。

■子どもがやることじゃない。

□大人がやること。お父さんやお母さんがやることをあなたがやっていたのね。それは辛かったね。そうなんだ。そういう自分は当然頭に来ることがあるし、怒りがあると思うし落ち込むこともあると思うけど、かくしていたの?

■もちろん。

□どうして隠してないといけなかったの?教えてあげてそれをAさんに。

■言っても分からない。今でも覚えているのは子どもの頃集めていたシールがあって、学校に持っていったら盗まれたんですよ。学校に持ってきていけないことになっているから先生にも言えないし、帰って親にも言えないから、親には「あのシールは要らなくなった」って言って、要らないから全部あげちゃったっていったら親が「あんなに集めたのに変な子ね」って感じで。

□叱られるのが怖かったのね。

■叱るというレベルじゃなくてキレる感じだから。俺そういうの嫌い。

□お勉強をガンガンやっていたのはあなたなの?どうして勉強をガンガンやっていたの?

■簡単に評価がもらえるから。目に見えるし周りの子はなぜだか出来ないし。で俺だけなぜか出来ちゃうんで。

□それは頭がいいからだ。それはまあABC皆頭がいいんだよ、皆同じあなたなんだから。でもやるかやらないかの差は大きいね。

意外と嫌いじゃないんで。そういうの好き。結果が出ると安心する。

□そうだ、僕は直感的にあなたが力を与えてくれていたんじゃないかというのはそれなんです。だから頑張れる自分がいるのはジョンのおかげということはきっと聞いているAさんも分かっている。あなたは今までBの自分をどう見てたの?

■いや子どもだから俺からしてみたらバカにしているし結局必要ないときに出てくることが多いから、で足を引っ張るし邪魔だし嫌い。

□今もそういう感じですか?

■今はでも可愛いんじゃないかなと思っている。

□そこは大事だ。可愛げがないと人間っていうのは魅力がないんだよ。皆ねぇ、世の中に残っている人で人望がある人って皆可愛げがあるんだ。坂本龍馬もそう。可愛げがある。だからそれも大事な特性だよね。皆手を携えると無敵なんだ。社交を司っているAも、可愛げのあるBも、実務で力を与えてくれるCも皆重要だ。一つもかけることが出来ないんで、皆手を携えてやっていくのが一番いいかなと。それで本当に健康になれますよ。バラバラじゃなくていいんだよと。

じゃあね、今の話をAさんも聞いていますから、Aさんの方に代わってもらいますよ。

(精神療法的な解法)

「俺をなぜ産んだ」

どうあなた。今話を聞いていた感想をちょっと聞かせて。

■いやいや。

□良く分かったでしょ、頭じゃなくて感覚で。

■そうなんですよ。喋った内容も頭で分かっていてもこれだと感覚で落ちてくるんで。それでつながったっていう感じなんだろうなと。

□辛かったんだと思う。俺をなんで産んだっていうのはこれはちょっと僕も胸に来ましたね。子ども時代がなかったんだ。これは大変だったと思うね。

■そうですね、もうちょっと余裕が欲しかったというのはありますよね。他の子どもが色々買ってもらっているのにうちだけ物がないというのがあって。僕らの世代って80年代ですけど、同じおもちゃがないと一緒に遊べないというのがあって。

□ああそうですよねファミコンがないとね遊べないからね。組みぬかしになるから遊んでくれないよね。

■そういうのが嫌だったんで、そういう恨みみたいなのが色々あったですね。

□親は、ああいうことやるとダメな子になるというのは価値観としてあるんで、それを子どもに押し付けてしまうんでしょうね。

■ですね。実際の現場が分からないので。シールの話もそうですし、現場が分からないから。多分今だったら言えるんでしょうけど。

□いうとやっぱりなぜ失くしたんだとか責められるのが嫌だったと思うんだよね。どうして持って行ったんだとか説教されちゃうから。それが一回だったら耐えられるけどしょっちゅうあったんでしょ。そうか。なんで僕を産んだんだってことだね。強烈だね。

■よく言ったものですね。僕、出産時に仮死状態だったらしいんですよ。羊水を吸っちゃってて、その時に真空で吸い取ってくれる先生がたまたまいたんで蘇生したらしいんですけど、いなかったら死んでいたよって。それを言われてもって感じですけど。それで発達障害なのかなと思わないでもないですけど。そういう説もありますよね?

□まあそういうのもあるけれども、それはもっと粗大な脳の障害になりますから。それはなかったとおもうんですけどね、重たい脳の障害になるとか、運動能力に出るとか。だからそれは大丈夫だと思う、良かったですね。普通の親だとね、同じことを言うにも違ったニュアンスで言うと思うんですね。それは、死ぬとこだったのに助かったのは神様が味方して授けてくれたから、神様が授けてくれたチームの中にその医者がいたからだよとか、で本当に生きていてくれてよかったとかそういう言い方してくれれば響くと思うんだけども。ただ蘇生しただけだとちょっとあれ?って感じで。その辺がやっぱり発達的なんだよね。叱られるのが怖かったんだよね。

■普通の叱り方じゃないんで。

□多分突発的に怒りが出てくるんで、本人はなんでそうなっているか分からないんだよね。予測が出来ない。で勉強で頑張っていたのは結果が出るから。でBのこと皆さんそうだけどバカにするんだ。BはCの存在を怖がるんですよ。今はそうではないと。可愛いっていう風に変わってきたから、違ってきていると。あのー、甘えることが許せなかった、自分が許されなかったから。自分が甘えないで頑張ってきたから、皆だけど苦しみを分担していたんだよね。いや分担していたから生き残ったんだ、分担しなかったら壊れていたかもしれない。それなりの適応をしたんだよ。

■そう思いますね、このシステムはそれなりの必要があって出来上がったものだと思いますね。

□あともうゴールがちょっと見えてきた。第三コーナーを回ったところだ。

■本当ですか?嬉しいです。

□そんな感じですよ。だんだん僕もね、解離の治療が早くなってきた。昔は時間かかったけど、やり方が分かってきた。早いですよ。普通は何年もかかる(笑)奥さんは今のあなたに対して何かコメントしていますか?

■変わってきているよねとは言っています。良くなってきて安定してきたんじゃないと言ってます。明らかに去年こちらに来た時とは違う次元だよねと言われてます。

□もうじき治療も終了だと伝えて下さい。ここまで来るとね、逆戻りしないんだ。自分で相互に許すようになってきてるから、逆にはもう解体しないんだ。あと少しっていうのはそういう意味。第三コーナーを回って、もうじきゴールだ。それじゃあまた(笑)

(了)

第6回の感想

これまでの3回のジョンの呼び出しの中では一番リアルで躍動感ある人格が出てきたのがこの第6回でした。

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