【福島県シンガポール通信第11回】「ジャパンクイズ2007」表彰式 2007.12.13

福島県シンガポール通信

(本稿は2008年に福島県国際課HPに僕が寄稿した原稿を再構成したものです)

「ジャパンクイズ」を初開催

今をさかのぼること数ヶ月前。私が事務所に赴任した当初のことです。

CLAIRシンガポール事務所では、シンガポールにある日系機関あるいは団体と何かとお付き合いがありますが、その中の一つ、シンガポール日本文化協会(以下JCSS)とは特に関係が深く、以前「シンガポールの政策」という冊子を発行する際に内容の監修をお願いするなど、色々とお世話になっている団体です。

年度当初、顔合わせも兼ねてJCSSの顔会長、黄理事を事務所にお迎えして懇談していた時のことですが、顔会長から次のようなリクエストがありました。

「今年度、シンガポール人を対象に「ジャパンクイズ」というクイズ大会を開いて、日本と日本文化に対する一般市民の関心を強めたいと考えている。ついては、日本語で結構なのでクイズ作成を引き受けてもらえないだろうか。」

もとより、シンガポール事務所のミッションとして在シンガポールの各機関との繋がりを深め、連携を強化することもその一つですから、出来る限りの協力をする旨所長から話があり、星日文化協会との連絡担当である私がクイズの作成をすることになったのです。

困難を極めたクイズ作成

大量の問題作成リクエスト

クイズ作成の条件は以下の通りです。

(1)本番では100~150問を出題予定だが、その準備として500問を日本語で作成
(2)クイズが外部に漏れることを防ぐため、担当者一人で作成すること
(3)12月にクイズ本番の予定のため、8月末には500問を完成させてもらいたい
(4)クイズの対象者は、日本に1年以上滞在したことのないシンガポール人
(5)最終的に英訳され、4択のマーク形式で出題される
(6)参加者は500名前後を想定

なぜ500問作る必要があるかはさておき、とりあえずこのクイズ作成はとても困難な作業でした。まず、日本に1年以上滞在したことがない一般のシンガポール人が、どれくらい日本について知識があるのか見定めなければなりません。

例えば「鎌倉幕府を開いた将軍は誰か」といった日本の小学生レベルの問題でも、そもそも幕府とは何なのか、鎌倉はどこにあるのか等々、日本人であれば「言わずもがな」的な解答者側の知識を全く当てに出来ないのです。

外国人向けにクイズを作ることの難しさ

一つ好例をお見せしましょう。

「あんこを餅で包んだ甘いお菓子を何というか?
→①大福 ②菱餅 ③あられ ④せんべい」

答えはもちろん①。日本人であれば常識の範囲内の問題ですね。

まず、この問題を考える時点で「あんことは何か?」という概念を解答者が理解してないと駄目です。よって、直接「Anko」とローマ字書きするのはダメ。あえていうなら、

「Anko, a kind of traditional sweet paste made from red beans」

とでも書かないと分からない人には分かりません。
さらには、「餅」という言葉をどう処理するか。辞書では「rice cake」と出ますがこれは丸めたり四角に切った餅の話であって、大福のような場合ちょっとニュアンスが違います。これを直接「mochi」と書いてしまうと、日本語の言葉を知っているかいないかの問題になってしまい、日本や日本文化の理解に対するクイズという本来の趣旨から外れ、日本語の知識を問う問題になってしまいます。

さらには、選択肢を直接

Daifuku、Hishimochi、Arare、Senbei

とローマ字書きにするか、あるいは極力英語で表現するか(せんべい→rice cracker)といったように、たった1問でもこれだけ検討すべき点が出てきてしまうのです。
この検討作業を、作成時点で全ての問題について行う必要がありました。
だいぶ骨の折れる作業です。

しんどい作業だがなんとか完結

それでも、出題分野を決めて200問ぐらいまではなんとか順調に作れていましたが、それ以降はさすがにネタがなくなり、ひどいときには1問作りだすのに10分近くかかる状態になりました。

職場にある日本についての本(英語で書かれた日本紹介の本等)やWikipedia等のインターネット上のソースを総動員して、上司の方々の知恵もお借りしてアドバイスや修正をいただき、他の業務も錯綜する中8月末までになんとか500問揃えることができました。

9月になり、今度はそれをJCSSの方に200問に選んでもらう予定でしたが、その問題選定もCLAIR側で行うことになりました。本当はせっかく500問一つ一つを手作りで作ったので、その中から一つずつ選んで欲しかったのですが…残念ですが仕方ありません。

まず200問を選定し、その後JCSS側と何度か問題の検討会を行い、最終的に150問の問題に決定したのが10月中旬でした。これを当日の参加者は60分で解答しなければなりません。

また問題の英訳は、顔会長の知人のルートでとある日本の新聞社の方が英訳してくれました。また、参加者の募集はJCSSとシンガポール日本留学者協会(JUGAS)のHP等で行われ、シンガポールらしくオンラインで参加登録がされることになったのが個人的に興味深かったです。

オンライン登録フォームを作るのは割と面倒だと思っていたのですが(実はシンガポール事務所のHPは私が作成・更新していたりします)、予想以上に早く作り上げたのには驚かされました。

そして本番

そしてクイズ本番。

シンガポールにある某日本人学校の教室を借りて、200人を超える参加者がこの問題に取り組みました。私の予想では、難しい問題が多いので80/150問ぐらいが最高点数かと思っていました(多分、私が普通に解いても100問は解けないと思います)。

ところが、意外にも107点という高得点をマークした人が1位になったのです。しかもその最高得点者はまだ17歳の学生さんというではないですか!二重の驚きです。

当日の様子は、同じく後援をしていた在シンガポール日本大使館(外務省)のホームページで見ることが出来ます。

表彰式に出席

そして、その最高得点者を含む10位までの高得点者(3位までの人には5泊6日の日本旅行がプレゼントされます)を表彰する式が、12月13日夕にシンガポール日本人会を会場として行われました。

JCSSの日本語学校卒業式と合同の表彰式でしたが、日本大使館から磯部公使、またシンガポールの国会議員であるOng議員も臨席の上盛大に執り行われました。クイズの受賞者には当事務所の所長と日本公使から賞品が渡されました。

色々と大変でしたが、終わってみると他では出来ない貴重な経験だったと思います。関係者の方々も大変お疲れ様でした。無事に終わってよかったです。今後ともシンガポールとの関係強化のために頑張っていきたいと思います。

(了)

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