海外旅行・出張が決まったら、全ての情報をA4判1ページに集約した、魔法の「日程表」を作りましょう。同行する同僚、職場の上司、フライトを手配する旅行会社、留守宅の家族、訪問先の人々…簡単なフォーマットで良いので「日程表」を作って事前配布するだけで、旅の準備が恐ろしくスムーズに動き始めます。海外にいる間も、このA4紙一枚でさまざまに便利な使い方が出来る、じつに奥深いツールなのです。
この項では、僕が10年以上作り続けている「出張時の行程表」の考え方と、作成方法のポイントをイチから紹介します。
まずは現物からご紹介
まずは論より証拠なので、僕が2014年1月に香港・広州に同僚3人と業務出張した際に作成した「日程表」をお見せします。
そして、移動する際に大体の距離感を知るための関連地図も作成して共有します。
この際の出張内容の記事は下のリンクの通りです。
https://schliemann.tokyo/trip-to-guangzhou-2014/
日程表作成のポイント
では具体的に、どういう考え方でこのExcel日程表を作ったか説明します。
基本はもれなくダブりなく
基本は「この日程表を見るだけで全ての連絡先・訪問先・フライト情報が一目で把握できる」という点にあります。全ての情報が網羅されている必要があるので、直近の両替レートやチケットの予約番号、訪問先の住所やホテルの情報なども、書けるだけ書いておきます。特に移動手段の細かい時間や電車・フライト番号なども漏らさず書き込んでおきましょう。
これを持参することによって、最悪一人だけ街中ではぐれてしまった場合に通訳なしでホテルに帰る際の手がかりにもなるし、旅の間スケジュールを眺めておくことによって、同行者も含めより安全意識を高めることが出来るからです。
この広州出張で一番のポイントは「現地空港での合流」
例として挙げた広州出張の話をします。
この出張のとき、東京から僕と同行する営業マンと名古屋の営業マンは出張経験も多く心配なかったのですが、大阪から来る若手営業マンは海外出張自体初めてだということで、現地の香港空港での待ち合わせにやや不安がありました。入国審査が終わって、荷物をピックアップするところでの合流にしておいたからです。そのため、東京組と名古屋組が何時のどのフライトで到着するのか把握してもらいたかったので、オレンジ色で分かりやすく示しておきました。
こういうケースだと、一旦合流さえしてしまえばあとはお互いの携帯電話さえ通じれば何とでもなるので、とにかく携帯だけきちんとローミングで使えるように、大阪の営業さんには何度もお願いしてフライトに乗り込みました。
移動手段を細かく調べ上げておくと、もしもの時に便利
またこのケースでは、日本から「香港⇔広州間高速鉄道」のチケットも予約済みで、しかも広州東駅から宿泊ホテルは徒歩圏内、かつ2日間の研修中はメーカー側がタクシーを差し向けてくれるので、実際にアレンジが必要だったのは香港→九龍駅のエアポートエクスプレスと九龍駅→ホンハム駅の移動手段だけでした。比較的楽な部類の出張取り回しです。
九龍駅からフリーシャトルでホンハム駅に行くか、あるいはタクシーで行くかでしたがこの時はフライトが少し遅くなった関係でタクシーでホンハム駅に行きました。というように、現地で違う交通手段を利用する可能性もあるので、事前に出来るだけ複数の代替手段を検討しておくといざという時に役立ちます。
旅の行程を関係各所と共有する数えきれないメリット

情報共有が大事
実際には、このExcel作成作業は時間も手間もかかるので、もしかすると面倒がってホテルやフライトの予約票を何枚かクリアファイルに放り込んで済ませた方が楽に感じるかも知れません。
しかし、全ての情報をA4の一枚紙に集約してみることで、以下の大きなメリットを享受することが可能になるのです。これを見逃す手はありません。早速次回から行程表を作成してみてください。
事前に同僚や同行者から意見を聞くことが出来る
僕は自分がアテンド者として旅行の計画を立てる際、同行する同僚も含め関係者のフライト等が仮決まりした時点で、全てExcelの表に落とし込んで出張者間でシェアするようにしていました。こうすることで、「ここの乗り継ぎはちょっとタイト過ぎません?」とか「夜遅すぎるんで前泊しようよ」あるいは「あの空港はボッタクリが多いから事前に借上車を予約しようよ」などなど、自分一人では到底思いつかないような、第三者の視点から得られるフィードバックを出張行程に反映することが出来るのです。まさに三人寄ればなんとやらを地で行く知恵です。
そして同行者にも営業課長など直属の上司がいるので、営業所内でシェアしてもらうことによってより旅慣れている上司からのフィードバックも期待でき、また「きちんと出張の準備をしているんだね」と定期的に進捗報告も上げることが出来るので一石二鳥です。各営業所向けにも、この行程表は非常に重宝されたものです。
同行者の自発的な対応が期待できる
パックツアーなどを考えるとお分かりかと思いますが、基本的に他人がイチから組み上げてくれたスケジュールというのは、「きちんと考えてくれただろうから問題ないだろう」という先入観や遠慮もあって、あまり頭の中に入らないまま海外に出発してしまうことも多いです。
これを、出張企画準備の段階から同行社員に常に行程表をシェアしアップデートしていくことで、「自分が行く出張なんだ」という意識を高め、アテンド者である自分がいなくても自発的に現地で対応をしてもらえる能動的な同行者に仕立て上げることが出来ます。
行く前に、訪問先に自分たちのスケジュール感を知ってもらえる
役人時代は日本語スケジュール、商社時代は英語で行程表を作っていました。アポを取る際や出張本番の前の週などに、訪問先の役所やメーカー側にこの行程表を送付し、全体のどういう行程の中にそのアポ訪問が位置付けられているかを、事前に知ってもらうようにしていました。
こうすることで、例えば夕食会の場所や内容、時間や空港までの送迎など、先方が少し対応を修正してこちらがやりやすいように調整してくれることも多かったのです。また、訪問先の社内でもこちらの訪問する人間の社内的な立場やミッション内容などを事前に知ることが出来、実際の面談の際に少し対応が変わるという良い影響も享受することができます。
少なくとも、全く何も事前情報なしに訪問するより100倍マシなので、シェア出来る範囲でいいので訪問先にスケジュールを伝えてあげると向こうも安心するし、「きちんとした会社だな」ということでこちらへの信頼や評価も高まるかも知れません。
留守を守る家族や同僚が安心して対応できる
かつて僕が海外出張する時は、必ずこのスケジュール表を職場の女性陣(不在の際に電話応対をしてもらう)と留守宅の家族にメールでシェアして、かつプリントアウトしたものを職場パソコンと家に貼っておきました。こうすることで、「ああ今頃この辺でこれをやっているんだな」と一目で分かるので、職場での不在時対応や家族からの連絡時間にも融通がきくようになるのです。
非常時の連絡先が網羅されているので緊急対応に困らない
この書式にはきちんと落とし込んでいませんが、訪問先によっては非常時の連絡先や海外旅行保険の連絡番号も記載して、そこを参照すれば連絡が取れるようなフォーマットも用意しました。例えばこの出張であれば、僕は別途「覚え書き」というメモを作成し、ちょっとしたお役立ち知識をメモとして同僚3人に配布したものです。
香港覚え書き
■概要
・面積:1108km2。東京都の約半分(2012年)
・人口:約717万人(2012年)
・時差:日本より1時間遅い(中国本土と同じ)GMT+8
・電話:国番号852。安価にSIMカードを入手可能。
・ビザ:日本人の場合、90日以内の滞在ならビザ不要。
・通貨:香港ドル(HK$)1$=14円程度。通貨単位は香港ドル(HK$)とセント(¢)。1HK$=100¢=約13円(2013年5月31日現在)。紙幣は1000HK$、500HK$、100HK$、50HK$、20HK$、10HK$の6種類。硬貨は10HK$、5HK$、2HK$、1HK$、50¢、20¢、10¢の7種類がある。
発券銀行が3つあるため、紙幣のデザインが複数あることに注意したい。
チップ:【レストラン】レストランでは合計金額の10%がサービス料として上積み請求されるので、おつりの小銭を残す程度でよい。大衆食堂やファストフード店ではチップ不要。【ホテル】ホテルのトイレでは2~5HK$、ベルボーイや部屋係には10HK$が目安。【タクシー】タクシーではチップは不要。
・電気:220V/50Hz、プラグはBFが主流(時々Bタイプ)。
・免税:香港への持ち込み品には関税はかからないが、一定量以上のアルコールやたばこには物品税が課せられる。
・喫煙:基本的に公共スペースの喫煙は全面禁止。違反者には高額の罰金が科せられる。
・公衆トイレ:コインで支払う有料トイレが多い。
・Wifi/Sim:時々無料Wifiも飛んでいる。
■日本大使館
在香港総領事館
住所:香港中環康楽廣場8號交易廣場第一座46樓及47樓
TEL:(852) 2522-1184
FAX:(852) 2868-0156
代表料理:広東料理、イギリス料理等
土産:菓子類
名所:色々
広州についても同様のメモ書きを同僚には渡しましたが、こういうちょっとした情報が時として非常に有益なので、出来る限りの情報を同行者にはシェアしておいた方がいいでしょう。
重要:入国審査の時、もし止められたらこれを見せる
アジアではあまりなくむしろ北米でよくあるケースなのですが、入国時の空港で「今回の旅の目的は?」と聞かれてきちんと答えられない同僚が毎回1人くらいいます。下手に英語でしどろもどろになるよりも、いっそこれを見せてしまって下さいということで、カラー刷りしたこの「日程表」を入国審査官に示すようにいつもお願いしていました。
効果は抜群で、水戸黄門の印籠よろしく、この日程表を見ればすんなり通してもらえるケースがほとんどでした。この日程表はこんな時にも実に役立ちます。
まとめ
いかがだったでしょうか?細かい書き方やフォーマットはご自分で好きなものを作成すればいいと思いますが、きれいに色分けして、初見の人でも行程がすぐ把握できる形でA4紙を作っておくと、旅行準備段階でも旅行中でも本当に便利に活躍してくれます。
業務出張、海外旅行のいずれを問わず、旅行前にこの日程表を作成することをぜひ習慣化してみてください。絶対的におすすめです。
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