世間には電子辞書、オンライン辞書、昔ながらの紙の辞書と、様々なフォーマットの辞書が存在します。通常の通訳とは少し違った対応が求められる海外貿易の「技術通訳」の現場で、最も役に立つ最強の英語辞書とは一体どのようなものでしょうか?5年間のビジネス現場での厳しい通訳に耐えた経験から、最適解をご紹介します。
英和⇔和英の通常翻訳なら「英辞郎 on the Web」一択
まず最初に、現場に出ていない通常のオフィス業務(例:英文のメール作成、英文和訳/和文英訳)について考えます。実際に通訳を行う時とは違って、自分の裁量で時間をかけて翻訳作業に取り組むことが出来、インターネットにつながったパソコン等の前でじっくり調べることが可能な環境です。
この場合、すでに利用している方も多いと思いますが、まずは「英辞郎 on the Web」が第一候補、かつ最終解だと僕は思います。もし今あなたのブックマークバーに登録されていなければ、もう即座に登録しないと後悔しますよレベルの最強オンライン辞書です。
とにかくレスポンスの速さと生きた英語表現が秀逸
英辞郎は本当に優秀で、試しに調べたい日本語の表現や分からない英単語を入力すれば分かりますが、古臭い表現だらけの紙の辞書(とそれに派生する電子辞書類)に比べると、実用的な表現を一瞬で知ることが出来、より自然な英語表現を英文メールに反映する上でとても便利な辞書です。
また、ごくまれにサイトが重くなったりする以外は、無料とは思えないレスポンスの速さで僕らの翻訳業務を強力にバックアップしてくれます。僕は英語翻訳に携わる全ての人に、とにかく第一辞書としてこのオンライン辞書を常々推奨しています。
どのコースを利用すればよいのか
2019年7月現在、
- 無料かつID登録の不要な「英辞郎 on the Web」
- 例文検索付き、無料だがIDとパスワードを登録してログオンが必要な「英辞郎 on the Web Lite」
- より豊富な例文付き、月額300円の有料サービス「英辞郎 on the Web Pro」
の3コースが存在します。
僕は一時期(2年間くらい)、有料のProコースに登録して日々の業務を行っている時期がありましたが、結局途中から一番ベーシックな無料版(上記の1)に戻しました。僕の感覚ではマニアックな例文が多すぎてあまり実用的でなかったのと、検索履歴も結局毎日の大量の英文メール処理の中でいつしか埋もれていってしまい、上手に使いこなせなかったからです。履歴を簡単にExcelなどにインポート出来れば継続利用したかも知れません。
でも月額利用料は決して高くないので、もし例文により多く当たりたい方であれば十分元は取れる金額だと思います。お好みで、どのコースにするか決めると良いでしょう。
一方で、技術通訳の現場は時間との勝負
現場通訳の本番でゆっくり調べるヒマなんてない?
他の記事でも詳細に書きますが、僕が5年間やった技術通訳の現場はそうしたオフィスのゆったりした翻訳とは全く違う環境・プレッシャー下におかれます。簡単に分類すると、
- 大勢の人数が参加する客先訪問や社内研修で、昨日今日会ったばかりの外国人(英米人とは限らない)エンジニアが早口でまくし立てる技術トレーニングの内容を逐次通訳で説明する。(所要時間:短くて30分、通常は1~2時間。酷いときは半日いっぱい)
- 機材トラブル・クレーム処理で工場やプラントの現場にエンジニアと一緒に入り、客先の日本人社員の専門用語(業界により異なる)を分かりやすい英語に変えてエンジニアに伝える。意味が通じないと双方から通訳にクレームがつけられる。
- 展示会で見たこともない機材の聞いたこともない技術(大抵専門的な技術用語が10個ぐらい入っている)について、営業社員と海外メーカー社員の意思疎通を図らなければならない。単語1つ分からないだけで、通訳している内容がボロボロに…(笑)
といった感じで、結構厳しいプレッシャー下におかれます。このうち、下の2つは制限時間がないし、なんとかするコツもあるからいいんです。問題は一番最初の「技術レクチャーの逐次通訳」。これをやる時は本当に時間がなくて、講師が言ったことを即座に、単語の1つや2つ分からなくても訳し去らないといけません。アンチョコ的な単語集も作りますが、事前準備にもおのずから限界があります。
しかし技術通訳にその日は必ずやってくるのです。「単語1つ誤魔化して通訳したがために、講義全体の整合性が取れなくなってくる」恐怖の瞬間が(笑)大抵は優しい同僚かお客さんが横から「それってこういうことだよね」と助けの手を出してくれるのでなんとか誤魔化し切れます(神!)。
でもそうじゃないときも多い。ではどうするか。僕は大抵「ええと少しお待ちください」と言って、その場で調べます。プロらしからぬ態度と言われても構いません。技術通訳の現場で主導権を握っているのは、通訳している人だけなのですから、間違ったことを訳し続けるより300倍マシです。で、ようやく「最強のオフライン辞書」の出番となるわけです。
技術通訳に最強のオフライン辞書は「Handy英辞郎」
お待たせしました、大分長々とひっぱりましたが、僕が自信を持ってお勧めする現場使用のタフなオフライン辞書、それは「Handy英辞郎」です。
https://www.tecorin.com/handyeijiro/index.html現在リンク切れ
もう大分昔に購入して英辞郎データも一回買ったっきりなのですが、古い辞書データで継続してiPhoneで使用しています。よほどのことがない限り、一回買った辞書データでずっとやっていけるでしょう。機種変更しても変わらず使用できるUIなので、僕は現場での技術通訳で何度このアプリに窮地を救ってもらったか分からないくらいです。
僕は現場に出る技術通訳の方には、自信を持ってこのアプリを薦めます。
とにかく動作が早くて訳語も正確な「ハンディ英辞郎」
キビキビとした反応で、しかも手元の小さなスマホで速攻で専門用語の検索が出来る。かつ検索した単語の履歴は勝手に記録されいつでも参照し放題、一回通訳の現場に出て必要な単語を調べ終われば、いつの間にかそのメーカー用の単語集が完成しているわけです。


調べるだけで単語リストが完成
なぜ「オフライン辞書」でなければならないのか
前述の「英辞郎 on the Web」は当然インターネットにつながっていないと検索が出来ません。かつての僕は「テザリングもローミングもあるから、ネット辞書で大丈夫だろう」と多寡を括って海外出張に行ってましたが、意外とローミングがつながらない展示会場って多いんです。あと客先の会議室も、大抵シグナル強度は弱いです。プラント工場に入ったりすると、そもそもスマホ自体取り上げられたりするのでもっとアレなんですが。
なので、技術通訳はいつでもネットなしで検索できる「オフライン辞書」を持ち歩かなければなりません。そういう意味で、バックアップとしてデジタル電子辞書を持ち歩くのも一案で、実際に僕は白黒液晶のデジタル辞書をサブとして出張に携帯していました。


意外と使いづらい電子辞書
でも、この手の機種って大抵ディスプレイの反応が遅いんです。学校の英語学習用ならかさばらなくて便利なのでしょうが、正直ビジネス現場で必要とされる反応速度には対応できません。あとバッテリも気が付いたらなくなってたりするし。気休め程度に、あってもいいかな?といった感じです。
辞書にお悩みの方はぜひお試しを
今まで色々なアプリを入れて試行錯誤しましたが、2014年にこのアプリに出会ってからはずっとこれ一択です。現場に出る機会の多い方はぜひ試してみてください。
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