僕と英語その1.5:イギリス研修 in 1995

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(本稿は1995年に作成された某報告書を再構成したものです)

安積高等学校創立110周年記念 イギリス研修

「人間の学ぶべきものはまず人間」
アレクサンダー・ポウプ 英国の詩人(1688‐1744)
「人 間 論」

The proper study of mankind is man.
Alexander Pope
An Essay on Man

1995.7.21~30
安積高等学校奨学事業委員会

110周年記念 奨学事業について

生徒の海外研修

創立110周年にあたり、記念事業として、後々まで残る「もの」を作る従来のやり方ではなく、今までにない新しい形の事業を企画することになった。それがこの生徒の海外研修という奨学事業である。

事業の目的

現代社会の国際化は高校生にとっても決して無縁ではない。情報網の発達により居ながらにして世界情勢を知ることができ、逆に日本の出来事も瞬時にして世界を駆け巡ることになる。高校生が自分の進路や社会のあるべき姿を考えるとき、世界の中の日本を見つめ、その中の自分を見つめることは重要なことである。
この事業は代表の生徒の海外研修を通じて本校生の国際理解・国際交流の促進を目的としている。海外の事業を学んできて本校生に伝えるのはもちろん、日本そして安積のことを伝えてくることも重要な使命である。

研修の概要

代表の生徒10名を夏季休業中に10日間ほど海外に派遣し(引率教員2名)、大学・施設訪問、市内見学、高校生徒の交流、ホームステイ等により現地で研修・交流を行う。
海外での研修をより高めるために、事前に事業の趣旨、現地の状況・留意点、日本・福島県・郡山・安積、英語などについて十分に研修を行う。この間、ホームルーム・学年集会・全校集会などの機会に、直接海外研修に参加しない他の生徒と話し合う場を持ち、研修内容。交流の方法などについて意見交換を行い、より幅広い視点から研修ができるようにする。
帰国後には、紫旗祭での展示、各種の発表会・報告会、報告文集の発行などによりその成果を全体に還元していく。
これは今後5年間の継続事業とする。
訪問先はその都度検討することになる。

平成7年度奨学事業「海外研修」の概要

派遣生徒 平成7年度第2学年生徒 10名
研修先 イギリス(ロンドン)
研修期間 平成7年7月21日(金)~30日(日) 10日間

事前研修の記録

5月11日(木)イギリスの文化…全般 パターソン先生
15日(月)イギリスの風物…言語 神保先生
17日(水)English Conversation(1班) パターソン先生
18日(木)English Conversation(2班) パターソン先生
22日(月)イギリスの風物…余暇、音楽 神保先生
24日(水)English Conversation(1班) パターソン先生
25日(木)English Conversation(2班) パターソン先生
26日(金)先輩のアドバイス 昨年度の海外派遣生9名
31日(水)English Conversation パターソン先生
6月1日(木)イギリスの風物…教育、日常生活 佐藤先生
2日(金)イギリスの歴史、政治、文化① 坂本先生
5日(月)イギリスの歴史、政治、文化② 坂本先生
7日(水)English Conversation(1班) パターソン先生
8日(木)English Conversation(2班) パターソン先生
9日(金)イギリス、およびロンドンの地理 井上先生
15日(木)English Conversation(全員) パターソン先生
22日(木)English Conversation(全員) パターソン先生
29日(木)English Conversation(全員) パターソン先生
7月6日(木)English Conversation(全員) パターソン先生
13日(木)English Conversation(全員) パターソン先生

行 程

Day 1 7/21(金)
奨学事業委員会による出発式
9:08 郡山発 やまびこ3号
13;55 成田空港発 英国航空008便にてロンドンへ。
(ロンドン泊)
Day 2 7/22(土)
ロンドン市内研修(国会議事堂、ウェストミンスター寺院、バッキンガム宮殿、大英博物館)
ホームステイ開始
(ロンドン泊)
Day 3 7/23(日)
ロンドン市内研修(ホストファミリーとの特別な計画がない者6名)
ロンドン塔、ロンドン動物園、国立美術館
(ホームステイ)
Day 4 7/24(月)
イングランド銀行見学、安高OBとの昼食会(TBSロンドン支局長、日本生命社員)
昼食後、ピカデリーサーカスへ
(ホームステイ)
Day 5 7/25(火)
ピカデリーサーカス集合後、グループ研修(①ピカデリーサーカスでパフォーマンス(街頭インタビュー、けん玉、書道、②ギネス博物館、国立美術館、大英博物館、セントポール大聖堂を見学)
(ホームステイ)
Day 6 7/26(水)
サウスケンジントン集合後、博物館通り研修
(自然史博物館、科学博物館、ビクトリア・アルバート博物館)
午後、グループ研修
①テートギャラリー、拷問博物館
②ベーカー街、マダムタッソー蝋人形館
(ホームステイ)
Day 7 7/27(木)
オックスフォードへバスにて移動
オックスフォード大学構内及び市内見学
(ホテル泊)
Day 8 7/28(金)
午前 オックスフォード市内散策
午後 電車にてロンドンへ
(ホテル泊)
Day 9 7/29(土)
午前 バスにてウィンザー城へ、城内見学の後ヒースロー空港へ
16:30 英国航空007便にて成田へ
Day 10 7/30(日)
12:10 成田着
14:13 成田エクスプレス
15:48 やまびこ17号
17:05 郡山着、駅構内にて帰着式

日本へ(7月29~30日)

イギリスで迎える最後の朝だ。ホテルの窓から見たテムズ川は、朝の光を浴びて輝いている。水面に移ったタワーブリッジが以前来た時とはまた違ったことを語りかけてくるような気がした。

朝食を済まし、チェックアウトしてから僕たちはタワーホテルを出発。みんな少し眠たそうにしながらガイドさんのウィンザー城に関する説明を聞いていた。この日の午前中は、ウィンザー城見学だった。
ウィンザーは、ロンドンの郊外にあり、女王もよく滞在するというウィンザー・カースルを中心として城下町が形成され、そのすぐそばをテムズ川が流れる非常に美しい場所である。ちなみに僕とO君は日曜日にホストファミリーに連れられて一度行っていたので、これが二度目だった。
到着後、まずウィンザー城を見学した。城内の広場では丁度うまい具合に衛兵の交代が行われていて、英国人や日本人だけでなく、他にも多くの人々がいて熱心に式を見ていた。students in oxford
何枚か写真を取った後で、城の建物の中に入った。内部は薄暗くて人がたくさんおり、古ぼけた調度品や家具も手伝って異様な雰囲気だった。壁には何十本という長剣や短剣が掛けられ、大広間に並べられた椅子の数が過ぎ去った大英帝国の黄金期をしのばせる。
城の見学が終わってから、城下町の一角にあるレストランで昼食を取ることになった。いろいろ歩き回ったのでお腹が減っており、イギリスで取る最後の食事を皆充分に味わったようだった。

バスは走る。ウィンザー城をあとにした僕たちは一路ヒースロー空港へと向かった。車の窓から景色を眺めているうちに何とも表現できない気持ちが沸き起こってきた。「帰りたいけど帰りたくない」というのが、矛盾しているが正直な気持ちだったと思う。
午後2時過ぎにヒースロー空港に到着。バスから降りて、空港内でトランクを預けてから出国検査を受けるために急いだ。
この時の出国検査もそれほど厳しいものではなかったが、気が付くとY君が係員に何やら呼び止められている。後で聞いた話では、お土産にと購入したペーパーナイフがX線に引っかかったらしい。厳重な検査が、安全を保障する。僕は少し気が楽になった。
それからしばらく免税店などで買い物をしたり休んだりしてから、BA007便に搭乗するためにゲートに向かう。快い疲労が、体の中を満たしてゆくように感じる。やれるだけのことはやった。その思いが、かすかな満足感と共にみんなの表情に表れている気がした。

そして数十分後、英国標準時午後4時50分。成田行きBA007便は、ゆったりと、ヒースローの滑走路から飛び立った。飛行機の中はとても暑かった。たまっていた疲れがどっと出てきて、スクリーンに映されている映画を見ることもなくすぐに眠りに落ちてしまった。時々目を覚ましたが、誰も起きている人はいなかったようだ。

帰りの12時間はあっという間だった。日本標準時で昼間の11時45分に、BA007便は成田に到着した。
その日、日本は燃えていた。東京の気温が35度を超えていると聞いた時に、機内の暑さにもかかわらず背中が寒くなるのを感じたのはおそらく僕だけではあるまい。
入国審査の時、時間があるということで空港内で食事を軽くとった。ただの天ぷらうどんが720円。高い。カルチャーショック(?)を受けた。あれこれと話をしながら時間をつぶして、2時になったので成田エクスプレスに乗り込む。
久しぶりに見る日本の田園風景。東京駅で東北新幹線に乗り換えて、郡山へと向かう。日本語で書かれた広告や表示を見るたびに、妙な安心感を覚えたりした。日本に帰ってきた。その思いが強かった。
そしてついに午後5時5分、郡山駅に到着。出迎えに来てくれた先生方や家族の顔がやたらと懐かしく思える。見慣れた街の風景が、何だかとても鮮やかだった。
それから数十分の後。僕を乗せた車が焼け付いた道を家へとひた走る。(あれは夢じゃなかったか?)ふとそう考えたが、あの十日間が現実のものであったことを、誰よりも僕らは知っている。その時西に傾く夕日の向こうに、遥かなロンドンが見えたような気がした。
こうして、長い十日間が、終わった。

ホームステイ

僕のホストファミリーは、自動車教習所の先生であるスタンリー・コカー氏と、奥さんのウェンディ、長女であるニコラ(11)と長男スティーブン(9)の4人家族。また僕が行ったときには、フランスの高校生であるセシル(17)と言う子がステイしていた。

ボストンマナーの駅にはウェンディとニコラが迎えに来てくれて、助手席にブレーキがあるスタンの車で一路家に向かう。到着後、スタンとO君のホストが実の兄弟と言うことで、O君が登場してバーベキューが始まった。

ところで英国人は話すのが(特に女性が)速い。初めにウエンディが皆を紹介してくれたのだが、なまりも入っているらしくあまり聞き取れない(彼女はホリデイをハリダイと言う)。そして着いたばかりで頭が少しぼんやりしていた僕は、フランス人であるセシルに「君は何年フランスに住んでるの?」と聞いてしまった。顔も全然似ていないのに彼女が親戚だと思い込んでいたのだった。わかったようなふりをするのはよくない。無論彼女は怪訝そうな顔をして微笑んでいた。

ウィンザー城を見学

次の日は日曜。この日はウィンザーに皆でピクニックに行った。ウィンザーに到着後、一度車を降りてからテムズ川沿いに歩いてウィンザー城に到着。スタン達は一度見学したということで、僕とセシルとで城内を見学した。一通り見学した後で立入禁止の芝生に入って(その時は全然気付かなかった)しばらくいろいろな話をした。彼女とは歳が近いせいか話題もよくあって話が弾んで楽しかった。

その後昼食をとってからフットボールやバレーボールをやった。家に帰ってからも、日本から持ってきた壺をプレゼントしたりテレビを見たりして過ごす。

他にもスタンの友達がギターを持ってきてくれて、セシルと一緒にビートルズの歌を歌ったりした。また僕は日本文化の紹介と言うことでカレーと日本米を持っていって自分で調理してご馳走した。日本米はあまり好評ではなかったが、カレーは誰もが「うまい」と言って、結局全部なくなってしまった。ジャパニーズ・カリーは「円」に劣らず強いかもしれない。

僕がホームステイで感じた事は、国籍が、人種が、文化が、習慣がと言ってみたところで、結局みんな同じ人間なわけで、日本人と欧州人の感じ方や考え方に大きな差はないということだ。素晴らしい体験ができたと思う。あの五日間はおそらくずっと忘れないだろう。非常に強烈な五日間だった。

イギリスで気づいたことのメモから

A 交通

  • 交通車は日本と同じく左通行、自転車は車扱いで車道を走る
  • どこの地下鉄の駅にもチョコレート自動販売機がある
  • ハイウェイ料金は税金から引かれている
  • 歩行者の信号無視は当たり前
  • タクシーは後部座席にしか乗れないが、向かい合って5人乗れる
  • タクシーの初乗りは200円くらい
  • 地下鉄の吊り輪の代わりに吊り玉があった
  • 道路一つ一つに名前がある
  • 軽自動車が多い
  • 古いボロボロの車が数多くあった

B 街

  • 伝統のある場所の道は石畳
  • 車道より古い建物が大切にされるため街中の道はくねくね
  • 広々としていて緑に溢れた公園がたくさんある
  • 上半身裸の男性が歩いている
  • 年齢に関係なく夏は短パンの男女が多い
  • 街角や地下鉄の駅で楽器を披露し、チップをもらう人がいくらかいた
  • レジでの対応が遅い
  • 公園の鳥は手にのせた餌を食べる
  • イギリス料理店はほとんどなく、フランス、イタリア料理店はよく見られた
  • カメラをぶら下げている観光客は日本人だけではない
  • 移動アイス屋が多い
  • 公衆電話は壊れているものがあり、性能も悪い
  • コンビニが少なかったが、ファーストフードショップは多かった
  • 公衆トイレはお金を入れないとドアが開かないものもある
  • 巨大な博物館・美術館が多い
  • 高級デパート「ハロッズ」ではラフな服装をしたり、デイバック(リュックサック)を背負っていると入れない
  • ゴミ箱が多い
  • ゴミも多い
  • ベンチがいたるところにある
  • タンクトップの女性が多い
  • 美人が多い
  • イギリスでもへそ出しルック多い。ただしズボンずりさげはいなかった
  • 日本のようにファッションの流行に偏りはなく様々だった
  • 電線が地下を通っているため街並みがすっきりしている
  • ジュース自動販売機はほとんど皆無

C 人

  • 子供でもジェントルマン
  • 観光地やホテルの人はカタコト日本語を使う
  • 労働者はよくデモをする
  • 様々な人種の人がいる

D 家庭

  • コンセントの形が違う
  • テレビのチャンネルが国営2つ、民間2つの合わせて4つだけ
  • 子供たちは家でもはだし
  • 表札がない
  • ディズニーは子供に圧倒的人気を誇る
  • 庭づくりが好き
  • 写真が多く飾られている
  • 衛星放送のチャンネルが20くらいある

E 食物

  • ファンタよりそれに似たタンゴの方がメジャー
  • 飲み物はChildが日本のSサイズ、MがLサイズ、Lは超でかい
  • ポテトが大量に出される
  • 飲食物はとても安い(330ミリリットルのレモネード35円、ピザひときれ150円)
  • 一般家庭の朝食はシリアル
  • 水道水は本当にお腹を壊す
  • よく紅茶を飲む

F その他

  • 日本語があちこちで見られた
  • 漫画はほとんどない
  • 天気予報はヨーロッパ全土のもの
  • 新聞にはクロスワード、数コマ漫画、宝くじ詰めチェスなどが載っていた
  • ビートルズのイエスタデイの原本には変な人間の落書きがあった
  • タバコは16歳から
  • 夏は高温だが湿度が低いのでそれほど暑くない
  • 緯度が高いため夜9時ごろまで明るい
  • スチュワーデスさんがとてもきれいだった
  • エスカレーターでは急いでる人のために左側を常に開けている
  • いろんな人が腕にタトゥー刺青を入れていた
  • セガは人気があるらしい

感想 ~研修を終えて今思うこと

7月21日。期待と、希望と、少しばかりの不安とともにイギリスに飛び立ってから、もう2ヶ月以上経っているのかと思うと、僕の心にまた新たな感慨が湧き起こってくるのを感じる。10日間の短さを微塵も感じさせることがなく、充実した研修になり得たのは関係諸氏のご尽力や、僕の九人の仲間と引率の先生方の力によるところが大きかったと思う。この場を借りてお礼を述べたい。

イギリスで学び得たものは非常に貴重で、かつ豊富に示唆を含んでおり、帰国後あれこれと思い出し考えることによって得られたものも多い。それらを全て伝えることができないのは残念だが、この文集から、僕たちが感じたり体験してきたことを皆さんに少しでも多く二次的に吸収してもらえれば嬉しい。

日本に帰ってきたときに、新幹線の窓から日本の田園風景を眺めて、僕はそれをとても美しいと感じた。日本には、諸外国に誇れる芸術や伝統、自然美や文化があることを改めて認識した瞬間だった。

僕たちが、これから21世紀を諸外国の人々と肩を並べて歩んでいくからには、妙な優越感や劣等感、偏見、民族意識を持つことなく、人種や文化の異なる人々と新しい関係を築くことが僕たちにとって重要なことと考える。本当に、世界は広いと思う。広いが故に、僕たちの世代がなすべき仕事は、今回の10名のそれと本質的には違いないのだろうが、やはり大変なことだと思う。国際理解。するのもされるのも、口で言うほど優しくはなく、だが思っているほど難しくはないと感じた。

最後になるが、個人の反省としては、随所で僕は失敗をして良い経験をさせてもらったと思っている。これからこの海外研修に参加する人たちには、どうか僕たちの今回の研修の良い点悪い点を踏まえて、より良い研修となるように頑張って欲しい。

(了)

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