WAISを受診してきた
初回受診時、先生から「費用はかかりますがWAIS-IIIの検査をやってみて下さい」と言われたので、自分の特性を知るためにも検査を受けてみました。予約は一週間後、返金不可、所要時間2時間の長丁場。当時は超絶うつ状態で、かつ下心があって「結果がよろしくなければ自分の処遇も良くなるのではないか」との思いからあまり集中してやらずに、途中結構投げやりになってしまった部分があります。
報告書
1.検査時の様子
検査時間は約1時間半であった。検査中は最後まで集中して取り組んでいたが、早く回答したいあまりに説明の途中で問題に取り掛かる場面や回答できなかった前の問題のページをめくり再度考えるといった様子が見られた。
2.数値結果
全検査IQ 123
言語性IQ 129
動作性IQ 110
【群指数】
言語理解 126
知覚統合 112
作動記憶 130
処理速度 118
あなたにとって弱い(苦手とする)能力
完成…視覚情報の中から重要な個所を見つけ出す能力。長期記憶内における視覚情報の量。
あなたにとって強い(優れている)能力
記号…視覚情報の弁別能力。
3.結果と解釈
Aさんの認知機能は、同年齢集団と比して”高い”水準に位置していました【全検査IQ=123(平均値は90~110)】また、言語性IQは”高い”水準、動作性IQは”平均の上”の水準でした【言語性IQ=129、動作性IQ=110】。Aさんは、見て理解することや見たものから考えたりイメージしたりすること、何かを見ながら手を動かすようなマルチタスクを行うことなどの能力(動作性IQ)に比して、言語の習得や理解、あるいは聞いて覚えたり考えること、言葉で説明することなど、言葉を介して処理する能力(言語性IQ)が優れています【言語性IQ>動作性IQ】。ただし、各下位検査間における得点のばらつきがあることから、全検査IQおよび動作性IQの数値はあくまでも参考値と考えられます。したがって、群指数および下位検査の数値をベースに認知機能を見ていく必要があります。
なお、各下位検査間の得点のばらつきから、Aさんは得手・不得手な能力間のギャップが認められました。このようなギャップは、Aさんにとって日常生活の中でうまくいかなさを感じる一因となっている可能性が考えられます。以下、各群指数および下位検査の数値を基に述べていきます。
作動記憶
聴覚情報を一時的に記憶し、頭の中で情報を操作、処理する能力は、同年齢集団と比して”特に高い”水準に位置していました【作動記憶=130】。Aさんは、①聞いた情報を一時的に記憶にとどめておける貯蔵量が多い、②電話番号や伝票番号、値段などの数字の羅列をパっと聞いてすぐに覚えることが得意、③聞いた情報を忘れないように記憶しておきながら、同時に別の処理をすること(暗算する、別のことを考えるなど)が得意であると言えます。ただし、本検査では数字や無意味つづりのかな、算数の問題文など非日常的な聴覚情報を用いているため、他者との会話など日常的な聴覚情報の記憶や処理する力は計測されていませんので解釈には注意が必要です。
言語理解
言葉や言語概念の習得・理解、および言語情報から物事を推測する力は、同年齢集団と比して”高い”水準に位置していました【言語理解=126】。Aさんは、言葉を基に論理的に考えて処理することが得意であることに加えて、歴史など教養で身につけられる知識や語彙が豊富であり、社会的なルールや文化に対する理解にも優れていました【類似=13、知識=15、単語=16、理解=13】。Aさんは言葉を習得するだけでなく、言葉を基に考えたり、理解すること、言葉を用いて他者に説明するといった言語能力がとても優れていると言えます。
処理速度
単純な視覚情報を素早く正確に識別し、目と手の運動を協応させて単純作業を効率よく遂行していく力は、同年齢集団の”平均の上”の水準に位置していました【処理速度=118】。Aさんは、目で何かを見ながら手を動かすといった同時作業が得意であると言えます。特に、目で見たものの中からパッと異同を判断するなど情報を認識するスピードが早いようです【記号探し=15S】。しかし、見落としも生じやすいことが明らかになりました【記号探しの誤答4つ、自己修正1つ】。日常生活の中では、例えば書類を見ながらパソコン作業を行うなどのマルチタスク業務がとても速いと考えられますが、見落としやケアレスミスによって正確性に欠けてしまうことが多いかもしれません。
知覚統合
視覚から得られた情報を基に、全体像やパターン把握、推理する力は、同年齢集団の”平均の上”の水準に位置していました【知覚統合=112】。視覚情報の中から規則性やパターンを掴むことや、物事の全体像から部分に切り分けて多面的にとらえることが得意でした【行列推理=14、積み木模様=13】。一方で、Aさんは見ている視点が他者とズレやすい、あるいは一つの視点に固定されやすく重要なところを見落としやすいようです【絵画完成9W】。また、下位検査の特徴を鑑みるとAさんは対人場面や日常の中で目に触れるものよりも、幾何学的な図形や記号における処理の方が得意であると推測されます。日常生活の中では、人より物を好む傾向、あるいはグラフや図形などで説明されると分かりやすいと感じることが多いかもしれません。
4.まとめ・今後の対応
上記の通り、Aさんの認知機能は”高い”水準にある一方で、得手・不得手な能力間のばらつきが認められました。Aさんは、たくさんの優れた能力をお持ちであるため、周囲から期待されることや、大抵の人以上のことを求められることが多いのではないでしょうか。そして実際にこなすことも出来る高い能力をお持ちです。一方で、他者と見ている視点がズレやすくかみ合わないと感じることや、ケアレスミスや見落としが多く指摘を受けてしまうこともあったのではないでしょうか。(注:たくさんありすぎて笑えます)
今後はまず、自身の認知機能についての理解を深めることが肝要です。得手とする能力については、長所として活かしていきましょう。不得手な能力については、日常生活上の困難さを減らしていくために、工夫や対応を考えていきましょう。
具体的な対応としては、以下のようなことが挙げられます。
①Aさんは、言葉を理解したり、聞いて処理するといったことがとても得意な分野ですから、見て分かりにくいものは、文字や言葉で理解するように工夫することで、高い言語性の能力が活かされます。また、図やグラフなど自身が見て分かりやすいと感じるものに置き換えてみることも有用です。
②Aさんはケアレスミス、見落としが起こりやすいと推測されます、ケアレスミスを減らしていくためには、確認作業を習慣化することが有用です。パソコン業務などでは、誤字脱字のチェック機能を使うことも有用ですし、作成した書類を紙に印刷し、他の行は隠しながら一行ずつチェックしていくという方法もあります。また、作業を終えてから一気に確認するよりも、休憩に入る前や一段落付いたところでこまめに確認すると見落としも減っていくと考えられます。ケアレスミスや見落としが減ることで、Aさんの本来の高いパフォーマンスが発揮されるでしょう。
③重要な点を見落とす、あるいは他者との視点のズレやすさから生じる齟齬を減らしていくためには、自分があっていると思っていても一度言語化して確認することが有用です。例えば、「一番上の右から二番目の棚で合っていますか?」「資料のこの部分で合っていますか」といったように、相手が指しているものが何かを明確にするといったやり方です。すぐに実践できてシンプルな方法から試してみるのは如何でしょうか。
以上
受けてみて雑感
中学校以来の知能テストでしたが、本当に何でもわかっちゃうんですねーってくらい当たっていて読みながら笑えてきました。言語記憶の能力が高いのは、多分過去5年間通訳の仕事をやったおかげで後天的に記憶容量が増えたのだと思います。そしてケアレスミスや見落としの点、これは本当に小さな頃から嫌になるくらい聞かされてきました。生まれつきだということであれば仕方ないですね。
聞くところによると、群指数のうち15点以上の開きがあると発達障害を疑うレベルになってくるそうですので、私の場合もちょうどそれぐらいの開きで、まあ発達障害なんでしょうね、と数値上からもバックアップとなる指標でした。しかし、対策としていくつか案をいただいたものの、すでに全部試してるんですよね…。それでもミスはなくならない。
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